――短くでいいので教えてください。ドームの景色って、どういうものでしたか?
えっと、技術的に言えば、やっぱり平衡感覚がすごい掴みづらかったです。スポーツ選手なんでそういうことを言っちゃうんですけど。でも、やっぱりこれだけの方々の前で久しぶりに歓声を浴びながら6分間練習だったり、試合のプログラムたちをいろいろやってみて、本当に幸せでしたし、何よりこうやって一人の人間にこれだけの力が集まることは本当に普通はありえないことなので、本当、幸せな経験をさせていただいたんで、ちょっとでもこの幸せな経験とか、また、自分から発せられた思いだとかを、この、なんだろう。未来が見えない今の世の中に対して少しでも力になればいいなって思っています。
――物語のなかで「魂の世界を旅しているという」メッセージがあるような気がしたのですが、いかがですか。
うーん。なんだろう。なんか、魂っていうより、僕のなかではペルソナっていうユング心理学の言葉があるんですけど。みなさんがそれぞれ社会にいるときに使っている自分の顔だとか仮面だとか、そういったイメージで考えてくださると、僕にとってこうやって喋っているときだって、きっと自分が見せたい羽生結弦を出しているんだと思いますし。
でもきっと、話しながらも心のなかでくすぶっている羽生結弦もいるんだなって思ってますし。それはたぶん、僕だけじゃなくてみなさんが持っていること。だから、なんて言えばいいかな……。少しでも自分自身が持っている、みなさんが持っている本質的なみなさんとペルソナのみなさんを少しでも認めていけるような、認めてあげられるような時間になったらいいなと思います。
――ありがとうございます。
なんか、ほんと、僕のためにありがとうございます。みなさんにまた見ていただけるように、頑張ります。
(去り際にも)ありがとうございました!
(構成/AERA編集部 福井しほ)