――今日、選んだプログラムは今までの積み重ねとして、関連付けようとした?
それぞれのプログラムたちって、やっぱりそれぞれ違う意味を持っていて。で、本来は『GIFT』っていう物語とはまったく関係のないプログラムたちなんです。ただ、今回『GIFT』という物語の中にこのプログラムたちが入ることによって、もしくはその演出たちとともにこのプログラムがあることによって、また新しい意味を付けられるんじゃないかなということを考えて滑りました。
なんか、フィギュアスケートってもちろん歌詞があるプログラムもありますけど、言葉のない身体表現だからこそ、受け手の方々がいろんなことを感じることができるっていうのがフィギュアスケートの醍醐味かなと思っていて。だからこそ、物語をつくって、その物語のなかの一つのピースとしてプログラムが見られたときに、どんなことをみなさん受け取ってくださるかなっていうことを考えながらプログラムを構成していきました。
司会:時間がないので、最後の質問で。
羽生:すいません。
――想像できないんですけど、率直に3万5千人の視線を浴びて、そのパワーと対峙するというのはどういう経験でしたか。今日という日の経験は今後の羽生さんにとって、どんなふうに生きていきそうですか。
正直、この会場に入ったときに思ったことは、「自分ってなんてちっぽけな人間なんだろう」ということでした。やっぱフィギュアスケートって本当に一人の人間もしくは二人の人間がやるスポーツですし、それを表現として、アートとして作り上げていくっていうことももちろん大事ですけど、まずは僕は男子シングルなので、男子シングルのスポーツ選手としてやるときに、本当にちっぽけな人間だなと。
ただ、その3万5千人の方々、そしてこの空間全体を使った演出をしてくださったみなさんの力を借りたからこそ、ちっぽけな人間であったとしても、いろんな力がみなさんに届いたんじゃないかなっていう気はちょっとしているんですね。
だから、ある意味では震災のときに一人ひとりだったらきっと何もできなかったなという記憶とちょっと似ていて。みなさんの力がやっぱり羽生結弦という一つの存在に対していっぱい集まったからこそ、絆があったからこそ、進めた、力が……。うーん、伝えられた公演だったんじゃないかなと思います。大丈夫でしたかね……?