――公演の中で「ひとり」という言葉がキーワードとして貫いていましたが、これを通じてファンや観客に届けたかったことは。
もちろん自分自身が今までの人生の経験の中で、「ひとり」ということを幾度も経験してきましたし、実際に感じることも今だにありますし、それは僕の人生の中で常につきまとうものかもしれないです。
ただ、それは僕だけじゃなくて、大なり小なりみなさんの中で存在しているもので。もちろん僕の半生を描いたような物語でもありつつ、でもみなさんにとってもきっとこういう経験あるんじゃないかなって思って、つづった物語たちです。少しでもみなさんの「ひとり」という心に贈り物をというか、ひとりになったときに帰れる場所を提供できたらいいなというふうに思ってこの『GIFT』を作りました。
――前半の最後に「ロンカプ(序奏とロンド・カプリチオーソ)」を競技会ならではの6分間(練習)もされて、プレッシャーがかかる場面で、最後はサルコーもしっかりやって。因縁のサルコーだと思うんですけど。
因縁のサルコーです(笑)
――そこに込めた、ロンカプを選んだことについて、率直に教えてください。
北京オリンピックでやりきれなかったという思いが強くあったプログラムです。あのプログラムには「夢を掴みきる」っていう物語が自分のなかにはあります。この『GIFT』っていうストーリーのなかにも「夢」っていう存在がものすごく大きくあって。そういう意味でも、まず前半の一幕のなかで夢を掴みきったっていう演出をしたかったっていうのがまず『ロンド・カプリチオーソ』を選んだ理由です。
ただ、北京オリンピックを連想させるような演出をした上で、ロンカプをやったのは、あのときに夢を掴みきれなかったからであって。あのとき夢を掴みきれなかったものを、今は掴み取るんだって。逆にまだまだ掴みきれていない夢も、4回転半だったりとか、ありますけど、それに向けてこれからも突き進むんだというイメージを込めて滑らせていただきました。