私からすれば岸田首相は、弱い農民から搾り取ろうとする江戸時代の悪代官のようです。昔、小学校で、江戸幕府の役人が「菜種と百姓は絞れば絞るほど出る」と発言したのを学びましたが、この思想はいまの岸田首相の考え方と重なって見えます。
――岸田首相はどのような政策を目指しているのでしょうか。
岸田首相の政策では、これから国民の生活はどんどん厳しくなります。
現在、輸入原材料が高騰しており、物価も上がっています。他方で、輸入品を除いた物価指数を表すGDPデフレーターを見ると、実はマイナスになっている。つまり、日本の経済はいまデフレになっている。賃金が上がらないのも、そのためです。
デフレ下では金融緩和と財政出動をしないといけないのに、岸田首相は逆に財政と金融の引き締めをやろうとしています。
例えば、国の借金を見てみると、一昨年度に102兆円増えましたが、昨年度は25兆円と、大幅に赤字の増加額が減りました。これは岸田首相が財政引き締めに、すでに舵を切っている証拠だと見ています。
また、金融引き締めについては昨年12月、日銀は長期金利を引き上げる方針を出しました。これは岸田首相の意向を反映したものだと見るべきです。今年4月、日銀の黒田東彦総裁が任期を終えます。金利を上げる、つまり、金融引き締めをする新総裁が選ばれ、超低金利政策は、おそらくここで終わると見ています。
岸田首相の財政健全化と金融正常化は、信念なのでしょう。そこには経済政策という科学的な論理はなく、宗教的な信仰に見えます。岸田首相のような政策から財政再建や経済成長を実現できた国を、私は一つも知りません。逆に大不況に陥った事例ならあります。
1929年に就任した浜口雄幸首相の時代です。世界で景気が後退し、日本でもデフレ下にあるときに、財政と金融を引き締めてしまい、昭和恐慌になりました。
――国民生活は今年、どうなるでしょうか。
日本では今年、経済が一気に失速するかもしれません。金利が上がることで、住宅ローンも上がります。住宅ローンの4分の3は変動金利ですから、住宅ローン破産が増えるでしょう。