マンモグラフィー検査や超音波検査、視触診で異常が確認された場合、しこりに針をさして細胞を採取する「細胞診」や「組織診(針生検)」に進み、病理検査によって悪性かどうかを診断します。
■乳房は全摘しても保険で再建できる
乳がんの多くは、乳汁(母乳)を乳頭まで運ぶ「乳管」にできます。がんが乳管内にとどまっている「非浸潤がん」と乳管の外まで広がっている「浸潤がん」に分けられます。非浸潤がんを放置すると、がんは乳管の壁を破って増殖し、浸潤がんになる可能性が高くなります。さらに進行すると、がんがリンパ管や血管に入り込み、全身に転移します。
乳がんは早期に治療すれば、治る確率が高いがんです。治療は、手術で乳房内のがんを取りきることが基本となります。手術の方法は、がんとその周囲を部分的に切除して乳房を残す「乳房温存術(部分切除)」と乳房全体を切除する「乳房全切除術(全摘)」があります。
埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科教授の佐伯俊昭医師はこう話します。
「部分切除は、自分の乳房を残せるというメリットがありますが、残した乳房に再発のリスクがあります。それを予防するために、部分切除の場合は手術後に放射線治療が必要になります。ただし、乳がんは多発することもあり、放射線治療を受けても残した乳房の別の部位にがんが見つかって再手術する場合もあります。また、術後に変形した乳房を見てショックを受ける人もいます。部分切除の場合、リスクや術後の乳房の変化をよく理解して選択することが重要です」
部分切除か全摘かは、がんの大きさや広がり、位置などによってある程度は決まりますが、本人の希望も重視されます。このため、メリットとデメリットをよく理解したうえで検討することが大切です。
全摘した場合は、失われた乳房を補うための再建術を受けられます。2013年から人工物の「インプラント」を含めた術後の乳房再建に保険が適用されるようになり、再建する人が増加しています。再建にはインプラントのほか、自分のおなかや背中など「自家組織」を使う方法があります。筑波大学病院形成外科教授の関堂充医師はこう話します。
「インプラントと自家組織にはそれぞれメリット、デメリットがあります。インプラントはからだへの負担が少ないですが、再建した乳房が硬く、動きがあまりありません。自家組織は動きや温かさが元の乳房に近く、最終的な満足度はインプラントよりも高いと言われています。しかし、手術時間が長くなるほか、採取した部位にも傷ができるといったデメリットがあります」