「強い西風に運ばれてきた雪が天狗原に吹き下りてくるので、地形的に雪がたまりやすい場所です。しかも前日には結構まとまった降雪があったので、雪の状態は相当不安定だったと思われます。そこにスキーで入っていけば、雪崩を誘発する可能性はかなり高かったと言えるでしょう」

頭をよぎる二次遭難の恐れ

 雪崩の危険性について、NPO法人「日本雪崩ネットワーク」はホームページで毎日、各スキーエリアの情報を日本語と英語で発信している。

そのうえで岸本隊長は、こう言う。

「28日はどの山域でも雪崩の危険性が非常に高かった。翌29日も『警戒』という情報を出していました」

 遭難現場周辺は大量の新雪が降り積もり、救助活動は阻まれた。

「スキーを履いて現場に向かったのですが、その状態でも膝まで雪に潜ってしまい、スキー板がまったく見えませんでした。スキー板を外すと、腰まで雪に沈んでしまった」

 二次遭難のリスクを少しでも減らすため、栂池高原(つがいけこうげん)スキー場の上部から最短距離で遭難現場を目指すのではなく、できるだけ樹木のある尾根から尾根を渡り歩くようなかたちで現場にアプローチした。

「雪山登山では、新雪が降り積もった沢や斜面に入っていくことはタブーとされています。繰り返しになりますが、雪崩の危険性が非常に高いですから。けれど、バックカントリーのスキーやスノーボードはあえてそこを滑り下るスポーツというか、活動なので、とてもハイリスクといえます」

スキー場の外は雪山

 長野県北部の北アルプスの山麓は「白馬バレー」と呼ばれ、北海道のニセコと並ぶ、山岳リゾートとして知られる。雪の季節になると、国内のみならず、世界中からウインタースポーツのファンが訪れる。

「つがいけロープウェイ」を運営する栂池ゴンドラリフトの担当者は、白馬バレーのバックカントリーの魅力を、こう説明する。

「八方、五竜、栂池の各スキー場の上部は北アルプスの山々につながっています。なので、山岳地形の場所に非常にアプローチしやすい。さらに極めて質のよい粉雪、パウダースノーが多く降り積もります。世界的にもこれほどの量の雪が一気に積もる場所は珍しいようです」

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外国人より日本人のほうが危機意識が低い傾向