カラテカの入江慎也さん(撮影/中西正男)

 僕だったら、まず怒鳴ると思います。「お前、なんでそんなところに相方を連れて行ったんだ」と真正面から言うと思います。でも、その逆でした。

 他の方からも“闇営業”に関して、どれだけ罵詈(ばり)雑言を浴びせられても仕方がない局面がいくつもあったんですけど、どの芸人さんからも、一度たりともそんなことを言われたことはなかったんです。その逆の言葉ばかりで。これはね、ある意味、本当にキツイですよ。あまりにも、ありがたすぎて。

 今の僕ができることなんて本当に限られてるんですけど、同じことを繰り返さない。もう信用を失わない。それを続けることしかありません。

 何をしてもお返しなんてできません。先輩方の懐がデカすぎて。すごすぎます。だからこそ、新しい仕事でぐうの音も出ないくらい頑張るしかないです。成功するしかない。

 YouTubeに出たり、こういう取材を受けたりすると「芸人に未練があるの?」みたいな声が寄せられることもあるんですけど、ただただ会社のPRになれば。その思いでやらせてもらっています。

 今言ったことが基本の思いなんですけど、ウソをつくのはダメなので、本当に、本当に、正直なことを言うと、未練がないことはないです。それくらい、芸人の世界はすてきなところですから。

 でも、僕には戻る権利も価値もない。その世界が本当にすてきだからこそ、僕は戻ることはできないし、今はただただ「ピカピカ」を大きくする。そのために力を尽くす。きれいごとではなく、今の思いはまさにお話をさせてもらった通りのことなんです。

(中西正男)

※後編<カラテカ「入江慎也」が語る相方・矢部太郎への思いとセカンドキャリアでの苦悩>に続く

■入江慎也(いりえ・しんや)

1977年4月8日生まれ。東京都出身。97年、高校の同級生だった矢部太郎とお笑いコンビ「カラテカ」を結成。 「アーイエ・オーイエ・オレイリエ! フロムLA!」とラップ調でポップに自己紹介するネタや“友達5000人”というキャッチフレーズなどで注目される。人脈を生かしコンサルタント業務を行う「株式会社イリエコネクション」を15年に設立。19年、“闇営業”問題で吉本興業を契約解除となる。20年に清掃会社「ピカピカ」を立ち上げる。2月1日に著書『信用』(新潮社)を出版。

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