この意見に対して、青山氏はこう話す。

「記者は仕事で取材しているので、みんな上司にメモを上げています。だから誰に伝わるかわからないし、デスクが週刊誌に流す可能性だってゼロではない。そのリスクについて荒井氏が『知りませんでした』と言うのだったら、あまりにもナイーブだし、素人すぎる。首相秘書官という立場のある人が、オフレコとはいっても記者に話すにはあまりにも緊張感のない内容だったのは間違いありません」

 一方で青山氏は、オフレコ取材の場にいた記者たちの対応にも問題があったのではないか、と語る。

「この発言を聞いたときに、これはオフとはいえ問題になりますよ、とその場で荒井氏にちゃんと言った記者はいたのか。荒井氏と議論したのか。問題だと思ったら『秘書官の考えをもう一度オンレコでお願いします』と言ってもよかった。その場でフンフンと聞いて帰って、上にメモを上げたら、こうなっちゃいましたという経緯だったら、現場の記者も情けないのではないか。私は政治記者になりたてのころ、先輩記者から『知ったことはどこかでは書かなければならない』と繰り返し言われました。今回のように、当日に実名報道するのはルール違反だとしても、たとえば『総理秘書官の一人』とか『総理周辺』というクレジットで書くこともできます。今後LGBTQ問題を記事化するときに、岸田官邸の雰囲気を伝えることはできる。また少し時間が経った後に、回想録的にオフレコ発言を書くこともあります。あのときはオフレコで聞いたけれど、実はこんなやりとりがあったんだよと明らかにすることはよくあることです。いろんな知恵を使って、書くべきことを書くのは、記者がやるべき仕事だと思います。取材対象者との信義を守りながら、そのタイミングとやり方を考えるのが腕の見せ所だということです。ただその考え方ややり方が、メディア一社一社、記者一人一人で異なるのがこの問題の難しいところです」

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