戸籍に記された性別を変える際の要件を定めた「性同一性障害特例法」という法律があります。その要件の一つについて昨年10月、最高裁判所の大法廷は「憲法違反で無効」と判断しました。小中学生向けニュース誌「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)1月号から解説します。
【図版】「性同一性障害特例法」って?わかりやすく解説「幸福追求権」を保障した憲法13条に違反
生まれたときに決められた性別が間違っていると感じる「トランスジェンダー」と呼ばれる人たちが、戸籍に記された性別を変える際の要件を定めた「性同一性障害特例法」という法律がある。その要件の一つについて、最高裁判所(最高裁)の大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は昨年10月25日、「憲法違反で無効」と判断した。
特例法は性別変更の要件を五つ定めている。そのうち「卵巣や精巣がないか、その機能が永久にない」という「生殖不能要件」を満たすには、卵巣や精巣をとる手術が原則として必要だ。「性器の見た目が、変更する性別の性器に似ている」という「外観要件」のためには、陰茎(ペニス)を切る手術を受けなければならない。この二つを合わせて手術要件と呼ばれる。
今回は、男性として生まれ女性として生きる「トランス女性」が、手術なしで性別変更したいと訴えた。
これに対して最高裁は、自分の思う性別で法律のうえでも扱われることは「重要な法的利益」と認めた。そんな大切な権利を行使するために、手術を受けなければならないのは、すべての国民が幸福を追い求める権利を保障した憲法13条に違反していると判断した。
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