「ルフィ」を名乗り、一連の連続強盗事件で指示役とみられる日本人の男4人が2月9日までに、フィリピンの収容所から日本に移送され、特殊詐欺事件にからむ窃盗容疑で逮捕された。4人はフィリピン国内での暴行などの刑事事案で告訴され、裁判所で審理が続いていた。当初は4人が移送されるまでには時間がかかるとの見方もあった。それが告訴が却下され早期の移送となったのは、フィリピンのマルコス大統領の来日が関係しているようだ。
1月30日の衆院予算委員会。立憲民主党の逢坂誠二議員が、連続強盗事件について質問すると、岸田文雄首相が
「徹底した捜査で全貌(ぜんぼう)解明を急ぐべきだ。政府として適切な対策を講じたい」
「国民の不安払拭(ふっしょく)に努めなければならない」
などと答弁した。
注目の事件とはいえ、首相が刑事事件について答えるのは異例だ。
「首相が強盗事件の質問をされ、答えるなんて滅多にないことだ。ルフィの連続強盗事件は国民の関心事でもあり、それに加えてフィリピンのマルコス大統領の来日。日本政府が外交ルートを通じて積極的に関与し、4人を強制送還させた」
と自民党の幹部は話す。
つまり、事件は「政治案件」になっていたのだ。
岸田首相とマルコス大統領は会談で、日本からの経済支援や中国を念頭に置いた安全保障問題などについて、両国の協力を強化する方針で一致したと、会談後の共同会見で明らかにした。
今月2日には、アメリカのオースティン国防長官がフィリピンを訪れ、マルコス大統領と面会した。ここでも中国による台湾侵攻や海上封鎖といった事態を想定し、米軍がフィリピンで使用できる一時的な駐留拠点を、現在の5カ所から9カ所にすることで合意した。
外務省関係者がこう話す。
「米中対立や、台湾有事は世界で最も懸念される外交課題だ。アメリカはフィリピンの軍事拠点を増やすために、オースティン国防長官がわざわざ足を運んでいる。そんな状況の中、マルコス大統領が来日するのに日本とフィリピンの最大の懸案が、ルフィの強盗事件だなんて格好がつきません。アメリカからみれば『日本は何をやっているんだ』となりますし、世界中からもそう思われますよ」