そもそも、今回の連続強盗事件に関与した疑いが持たれている4人については、日本での特殊詐欺事件にかかわったとされるグループが、2019年11月にフィリピンで摘発されており、その中心人物とされた渡辺優樹容疑者ら4人にも逮捕状が出ていた。
しかし、日本の警察当局とフィリピン側の連携が悪く、4人が拘束されたのが大幅に遅れた。結果的に「振り込め詐欺」がより凶悪化し、東京都狛江市の強盗殺人事件などにつながっているとみられる。
「警察がもっと早急に対応していれば事件は起こらなかったし、外交に影響を及ぼすこともなかったと思うのが正直なところ。警察は何をしていたのか、ということになる」(前出・自民党幹部)
一連の連続強盗事件が政治的な問題につながったことについて、フィリピン在住の元朝日新聞マニラ支局長で国際政治学が専門の柴田直治氏は
「フィリピンでは日本人の連続強盗事件は大きなニュースになっていません。というのも、フィリピンでは強盗事件が日本の比ではないほどたくさん起こっているからです。日本人の感覚からすれば、収容所で送還を待つ容疑者が携帯電話で犯罪の指示をするというのは信じがたい話です。しかし、フィリピン人の感覚ではよくあることなのでニュースにならないし、そもそも関心も小さい」
と現地事情を説明した上でこう指摘する。
「フィリピン国内で刑事裁判を抱えていた4人を、このタイミングで強制送還することができたのは迅速な対応だったと思います。やはり、マルコス大統領が訪日するので、日本とフィリピン両政府のメンツもあり、看過できなかったのでしょう。フィリピンから見れば、入管当局のありさまが大きく報じられて国家の恥のようなもの。『早急に解決を図った』という形が必要だったんでしょう」
日本でもフィリピンでも喫緊の課題が山積する中、あきれてしまうような現状である。
(AERA dot.編集部 今西憲之)