「いまだに、野球は親の負担が大変だと思われがちですが、私たちも変わろうと努力してきましたし、これからも努力を続けます。そうしたチームがどんどん増えてきていることを、もっと知ってほしいと思っています」
弓削さんは言葉に力をこめる。
学童野球の体質がなかなか変わらなかった要因のひとつに、監督が頻繁に交代する仕組みがあった。選手の父親が監督の場合、子どもが卒団すると同時に監督もチームから離れることが多いため、違う子どもの父親が新たに監督になるというサイクルが繰り返される。任期が短ければ問題点に目を向ける時間も限られ、前例を踏襲しがちになる。
「野球の街越谷」実行委員会会長の長瀬翼さん(同市立大相模中学教諭)が今年、市内の学童野球チームにアンケートを取ったところ、回答のあった21チームすべてでお茶当番を廃止し、卒団する子どもに用具を寄付してもらう取り組みをしていた。
「アンケートだけでも、様々な取り組みをしている実態が明らかになりました。監督やコーチが入れ替わることをあらかじめ想定して、チームの運営方針を定めたところもあります」(長瀬さん)
問題点に、自分たちで気づいたのだ。
市内の学童野球を長年、見守り続けてきた「子ども会育成連絡協議会」会長の会田容子さんも、昔を思い出しながらこう話す。
「親たちが多くの面で支えるのが当たり前だった昔とは違い、今はチームの練習体験会でも、監督やコーチが、『うちにはお茶当番はありませんから』などと、保護者の負担が軽いことをアピールするようになりました。子どもにも親にも学童野球を好きになってもらおうと、時代に合わせて、率先して工夫をするようになったと実感しています」
「体質が古い」などとマイナス面に焦点が当てられがちな学童野球だが、「変わらなきゃ」と動き始めているチームも、実はたくさんあるのだ。
(AERA dot.編集部・國府田英之)