お茶当番については、母親たちの考えもまちまちだったという。
「『自分で飲めばいいのにね』とウンザリしている人もいれば、『頑張ってくれているから、このくらいはしてもいいよね』と感謝の気持ちを持っている人など、いろいろな声がありました」(同)
保護者にはそれ以外の負担も多い。土日続けて練習や試合があるときの、ユニホームの洗濯、試合会場への子どもたちの送迎のほか、試合時のウグイス嬢の役なども回ってくる。他競技に比べて高いといわれる用具代の費用負担ものしかかる。
そんな負担増の状況下で生じるのが、親同士のあつれきだ。
「あの子の親、めったに来ないよね。私たちばっかりがやらされて。なんで?」
こう毒づく親の姿が、当時はよくある光景だった。
だが、今は違う。下の子どもが入っている別の学童野球チームには、お茶当番はない。子どもはそれぞれ、自分たちで水筒を持参する。
「監督、コーチと保護者で意見を出し合って、熱中症が怖い夏場だけ、お茶を用意するルールを決めました。よくわからないしきたりをただ受け入れていた昔とは違い、チームと保護者で意見を出し合って運営を考えていく形になっているので、みなさんの事情に合ったルールに変えやすくなったと感じています。もちろん、異なる意見が出ることもありますが、まずはひとつの方向でやってみて、気になる部分を調整していくようにしています」(同)
女性もバリバリ働く時代。共働きで、なかなかグラウンドに来ることができない親もいるが、
「その方の都合に合わせてスポットで手伝ってもらうなど、『どの親も来やすい環境』をつくるようにしています。『あの人来ないね』なんて文句は、うちのチームでは聞いたことがありません」
学童野球の前向きな変化に、女性は感慨深げだ。
ここ越谷市では、地元の野球関係者たちが「野球の街」として盛り上げようと手を組んだ。2022年春に「野球の街越谷」実行委員会が立ち上がり、学童野球チームも横のつながりが強くなっている。チーム同士で情報交換するなどして、いかにして子どもの野球人口を増やすかを考え、工夫するチームが増えてきている。