「子どもにとっても親にとっても魅力的なチームを作るためには、われわれが『変わらなきゃ』ですよね」
と語るのは同市の「間久里スネークス」監督の弓削靖さんだ。
弓削さんが監督になった時、チームにいた子どもはたったの10人で、存続の危機に立たされていた。
なぜこんな状況になっているのか。弓削さんはチームを俯瞰(ふかん)して考えた。
まず、目についたのは「お茶当番」。
しかもスネークスでは、親はお茶だけではなく、監督やコーチの昼食のおにぎりを用意するのが慣例になっていた。
その他にも、
▽グラウンドに用具を運ぶ当番
▽遠征先への送迎を誰が担当するかをまとめる配車当番
▽グラウンドを借りる許可を取る当番
▽保護者間の連絡をまとめるマネジャー係
など数多くの当番があった。
「こんなに役割があったら、子どもをチームに入れたいとは思わないですよね。チームに子どもを入れたお父さんお母さんたちも負担を感じてはいましたが、しきたりを変えてはいけないと思い込んでしまっていたんです。共働きの親が増えるなど世の中が変化しているのに、学童野球が変わらないのは絶対におかしい。そう感じました」(弓削さん)
弓削さんは徐々に改革を進めた。
「ごはんは、食べたいものを自分たちで食べますから」と宣言してお茶当番を廃止。用具は監督自らが運ぶことにするなど、できる限り親の役割を減らした。
用具代の高さに二の足を踏む親にも配慮し、卒団した子どもたちに道具やユニホームを寄付してもらう仕組みを作った。今はユニホームに、バットとグローブもチームのものを用意しているため、「やってみたい」と思う子どもは、最初から用具を買わなくても野球を始めることができる。
細かな負担にも目を向けた。土曜が試合で日曜が練習の場合、日曜の練習はチームのユニホームを着なくていいルールを作った。親は急いで洗濯する必要がなくなった。
10人だったチームは、今は40人。白球を追いかける子どもたちの元気な声がグラウンドに響く。