お茶当番などを廃止した「間久里スネークス」監督の弓削靖さん(撮影/國府田英之)
お茶当番などを廃止した「間久里スネークス」監督の弓削靖さん(撮影/國府田英之)
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 学童野球の悪しき慣習として、たびたびやり玉にあがる「お茶当番」などの保護者の雑用。他の競技に比べて高いとされる用具代も含め、親の負担が大きいというイメージが、子どもたちの野球離れの一因になっているとも指摘されてきた。だが、最近は保護者と指導者が相談しながらお茶当番などを撤廃し、親の負担軽減に努めているチームも多くなってきた。そんな活動に取り組んでいる、埼玉県越谷市のチーム関係者を取材した。

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「なんであんなことをやっていたのかなって。お茶当番、懐かしいですよね」

 と笑いながら昔を振り返るのは、埼玉県越谷市に住む50代女性。今も小学生の息子が市内の学童野球チームに入っている。

 8年ほど前、当時小学生だった長男が所属した学童野球チームでは、「お茶当番」などの雑用が当然のようにあった。

「入ってから、こんなことをやるんだって、とても驚きました」(同)

「お茶当番」とは、チームによって違いはあるが、主に、親たちが練習日や試合の日にローテーションを組み、指導者や選手用の麦茶を作って大容量のジャグ(水筒)に入れグラウンドに持っていく当番のこと。

 さらに、女性の長男がいたチームでは、持っていった後も一日中グラウンドにいなくてはならず、朝一番や昼食の時などタイミングを見計らって、監督やコーチに麦茶を持っていくことまでやらされていた。女性はこう苦笑する。

「そのタイミングがわからなくて、せっかく持っていったのに『おなかタプタプだからいらない』なんて断られたこともありましたね(笑)」

 水分補給など、大人なら自分でやればいいこと。監督やコーチって、なんて偉そうなんだ、と腹立たしく思う人がいるかもしれないが、ここが学童野球の難しいところ。

 監督やコーチは本業ではなく、チームにいる選手の父親や、卒団した選手の父親が務めていることが多い。つまり、母親から見れば、「貴重な休日を削って、自分の子どものためにボランティアで野球を教えてくれている誰かのお父さん」なのだ。

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「私たちばっかりやらされて、なんで?」