清掃行政などの地方自治に詳しく、「ごみ収集とまちづくり―清掃の現場から考える地方自治―」(朝日新聞出版)などの著書がある、大東文化大学法学部の藤井誠一郎准教授は、清掃車が火災を起こすメカニズムについてこう話す。

「清掃車にはいくつかタイプかあるのですが、一般的なごみ収集車はプレス車やパッカー車と言って、タンクの中にごみをかき込み、圧縮して中に押し込んでいく仕様です。それが清掃車火災の原因ともなっていますので、不燃ごみを収集するのには、平積みの小型ダンプ車のようなのを使うようになってきていますね」

 藤井准教授は週1回程度、東京都新宿区で9カ月、北区で7カ月、神奈川県座間市で6カ月、ごみ収集車の助手席に乗り、作業員と同様にごみ袋を車に積み込む作業を体験してきた。

「都内は人口が多く、密集しているから、自治体から清掃業務を受託するビジネスも成り立ちますし、新型の車も導入できます。しかし、全国的には過疎地もあります。地方で新型車を用意しようと思ってもなかなかできないと思います。スプレー缶ごみは毎日出るものではないし、週1~2回程度の収集業務ではビジネス上、ペイできなくなる可能性もあります。そうすると、従来型のプレス車で収集せざるを得ないという状況が続いているんだと思います」

 と説明し、こう続ける。

「東京23区の場合は地方の自治体に比べ、財政的にまだ余裕があるんですよ。ごみ収集車といっても、1台800万円から1200万円くらいします。高級車並みの値段なんです。もしも車両火災が起きて修理したり、買い替えたりするとなると相当なお金がかかります」

 日本エアゾール協会の大須賀広志専務理事がこう説明する。

「2018年に札幌市内の不動産仲介業者の店舗で、大量のスプレー缶の爆発事故が起き、多数の負傷者が出ました。あれだけ大きな事故が起きて注意喚起もしてきたけれど、それでも同じような事故が無くなりません。今回も同様で六本木での火災事故も寒い冬の日です。どちらも換気扇を回しているからと、室内で窓を閉めてエアゾール製品に穴を開ける作業をしています。日本のすべての自治体で『穴を開けない』ルールではないことが背景にあると思います」

札幌市で起きた大量のスプレー缶爆発事故。炎上し、建物は跡形もなく吹き飛ばされた=2018円12月
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