「IMRTは治療計画に手間も時間もかかるので、通常の照射で十分という場合にあえてやる必要はありません。しかしIMRTによる治療が望ましい患者さんに提供できないのは、大きな問題です。患者さんが不利益を被ることのないよう、学会も厚生労働省に条件の見直しを求めるなどの活動をしています」
●定位放射線治療
「定位放射線治療」は限局した小さながんに高線量を集める方法で「ピンポイント照射」とも呼ばれている。「画像誘導放射線治療(IGRT)」という位置合わせの技術を駆使。ミリ単位の精度で正常臓器を避けながら、1回に通常照射の4~10倍の線量を照射する。そのため根治性が高いだけでなく、合併症は少なく済む。大野医師は言う。
「1回の線量が多いぶん、照射回数を大きく減らせることもメリットです。早期肺がんなら5回以内で終了します」
定位放射線治療は脳病変専用のガンマナイフが効果を挙げてきた実績がある。現在は肺がんや肝がん、前立腺がんといった体幹部のがんに「体幹部定位放射線治療(SBRT)」がおこなわれ、早期では手術に近い治療成績を挙げている。
通常の外照射には主にX線という放射線が使われているが、近年は陽子線や重粒子線といった「粒子線」による治療も広がりつつある。
X線はからだの表面に最も強くあたって減弱していくのに対し、粒子線は放射線の粒子が重いため、病巣まで進んでから一気にエネルギーを放出し、そこでほぼ止まる性質がある。その手前や奥側の正常組織にはほとんどあたることはなく、合併症を少なくできる。
粒子線治療はすでに骨軟部腫瘍、前立腺がん、頭頸部がん、小児がん(陽子線のみ)に保険が適用されている。さらに22年4月、「4センチ以上の肝細胞がん」「肝内胆管がん」「局所進行性膵がん」「大腸がんの術後再発」「子宮頸部腺がん(重粒子線のみ)」の5疾患が、保険診療に追加された。大野医師はこう話す。