ドジャースでチームメートだったクレイトン・カーショーとは話し合う姿がよく見られた。メジャー屈指の左腕が『ダルは参考になることばかり』と語るほど。どの球団に移籍しても尊敬の念を持って受け入れられる。結果も残しているので説得力抜群で、将来の殿堂入りも期待できる」(MLBアジア地区担当スカウト)

「人間的に素晴らしいことは広く知られており、ダルが死球を与えても怒る選手は皆無に近い。マイナーリーグで食事を振る舞った話は、米国でもすぐに話題になった。グラウンド内外でロールモデルになりつつある。パドレスが高額長期契約を結んだのは選手としての能力はもちろん、イメージ戦略もあったはず」(在米スポーツライター)

 今年に入ってからダルビッシュはパドレスと新たに6年契約を結んだ。今季から42歳になる2028年までの6年総額1億800万ドル(約146億9000万円)の大型契約だ。そこには世界一を狙うための戦力としての評価に加え、球団の顔としての有形無形な期待も込められていると見られる。

「野球で上を目指す」という意思を貫き、NPBナンバーワン投手にスキルアップしてMLBでも屈指の好投手となった。一方でトミー・ジョン手術を経験し、ワールドシリーズ制覇をあと一歩のところで逃すなど、もどかしい思いも多くした。紆余曲折の経験が「野球能力に優れたヤンチャな選手」で終わる危険性もあったダルビッシュを、大人の野球選手に成長させたのではないだろうか。

 侍ジャパンへの合流前には「(日本代表は)少し気負いすぎというか、戦争に行くわけではない。気負う必要はないと伝えたい」と発言。当たり前のように優勝を期待され、相当な重圧の中で戦う他のメンバーへ“最高のアドバイス”を送った。しかし本音では誰よりも勝ちたい気持ちが強いはず。自分の立ち位置を理解しているからこその発言で、こういった選手がいるチームは強い。第2回大会で連覇を果たした時にマウンドに立っていた男が、今回も優勝をめざすチームで大きな役割を果たすのは間違いなさそうだ。