実際、センターが発表したこの問題の正答率は10.9%と高くなく、誤答が44.5%、無解答が44.5%だった。中村さんが続ける。
「試行テストということで問題が練られていない印象があり、本番ではもっと精度を上げてくるとは思います。しかし、採点の問題はどこまでいっても解決できません。出題側が意図していなくても『あ、これ合ってる』という答案が出てくる可能性はあります。国立大学の個別試験と異なり、共通テストの採点は、作問者と採点者、あるいは採点者間の意思疎通が十分に行えません。50万人が受ける試験で、それが40万枚目に出てきたら、採点を一からやり直すことができるのでしょうか」
そもそも記述式問題は、共通テストと親和性があるのか。これについては20年前、日本数学会が国立大学協会に出した入試情報開示に対する要望書が的を射た指摘をしている。▽数学記述式試験は総合的なものであり、言語能力が重要▽良問の答えは多様であり「解答例」や「採点基準」の開示は不可能──などと記された要望からも、記述式問題が共通テストには不向きだということが分かる。
「模擬試験の作成に関わった経験からすると、採点ミスや整合性の担保も心配で、ミスを発見して防ぐ制度設計が不可欠です。また、50万枚からどの2枚を取り出して比較しても、整合性のある評価がなされているか。その取り出し方は約1250億通りにも上り、チェックを行うことはまず不可能です」(中村さん)
文科省は国公立大に対し、2段階選抜の際、国語の記述式の成績を判断材料に使わないよう求める検討を始めた。数学についても、少なくとも同様の措置が必要ではないか。(編集部・大平誠)
※AERA 2019年12月2日号