大学入学共通テストで国語と数学に導入予定の記述式問題の見直しを求める声が強まっている。実際にどんな点が問題なのか。高校教師や予備校講師が分析した。AERA 2019年12月2日号では具体的な出題内容を例に解説する。
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大学入学共通テストを巡る問題に取り組む高校生らのグループが11月19日、2020年度から予定されている国語と数学の記述式問題の導入中止を求める緊急声明文を文部科学省に提出した。
「まったく『思考力・表現力』を測れるものではなく、何ら導入の価値がない」「一律の基準での採点が極めて難しく、採点の質が担保されない」──当事者の生徒たちがこう主張する記述式問題は、どのようなものなのか。まず、国語から見ていこう。
大学入試センターは17年度と18年度に「試行調査」と題してプレテストを実施した。それに先立ち、国語の出題のねらいとして、複数の資料の中から必要な情報を抜き出す思考力や判断力を問うことを挙げている。
実際に17年度のプレテストの問題1では、架空の高校の生徒会を巡って、5人の登場人物の会話文を、部活動規約と資料で補足して読み解く「複数の資料」を用いた出題となった。問1で「当該年度に部を新設するために必要な、申請時の条件と手続き」を、問2で兼部に関する要望を尋ね、問3で登場人物の会話の一部を推測させる内容だ。
東京都内の私立高校で国語を教える教員はこう指摘する。
「問1は規約の12条と13条を見れば会話文さえ読む必要がなく解けるし、問2は規約8条を読めば分かる。ここまで資料を使わずに解けたので、問3では資料を参照させるために設問が無理やり作られた形になっている。そこから導き出される解答も、不必要な情報だらけの悪文にならざるを得ない」
しかも問3は、文字数を80字以上120字以内とした上で、1文目を「確かに」と書き出し、2文目は「しかし」で書き始めるよう規定。さらに資料の中から「具体的な根拠」を選び出して示せ、というガチガチの条件付けで解答を縛っている。センターが発表した正答例はこうだった。