■レッツゴージョージ

 たった一人の少女から生まれた“美しい光景”だった。来日したオーストラリア代表の1番打者ティム・ケネリーの娘フローレンスちゃん。日本戦で応援に駆け付けると、東京ドームの本塁ネット裏のスタンドから「レッツゴージョージ!」と4番打者ダリル・ジョージに声援を送る姿がテレビ中継に映し出されて話題に。

 そして3月15日の準々決勝。キューバ相手に3対4で9回裏2死走者なし。敗戦間際でダリル・ジョージが打席に入ると、3万人を超える日本人で埋まったスタンドから「レッツゴージョージ!」の大合唱が沸き起こり、東京ドーム全体を大きく包み込んだ。この大声援に驚きながらも笑みを浮かべたダリル・ジョージ。オーストラリアの野球連盟も公式インスタグラムで「この音を聞いて」、「まさに特別な瞬間」と反応。試合には敗れたが、多くの人々の心に残る出来事となった。

■源田の1ミリ

 流れを変えたプレーだった。準決勝のメキシコ戦。7回表1死1塁から二盗を試みたトレホに対して、捕手の甲斐拓也(ソフトバンク)が素早くスローイング。ベース前で捕球してタッチを試みた遊撃手・源田壮亮(西武)に対して、トレホはヘッドスライディングしながら身をひるがえしてベースにタッチ。際どいプレーに、塁審の判定は「セーフ」。しかし、栗山監督がリクエストを要求すると、リプレー検証の結果、判定は覆って「アウト」に。結果的に三振ゲッツーとなり、その裏に吉田正尚の同点3ランが飛び出した。テレビ画面で何度も繰り返されたこの際どいシーンに、日本のSNSは即座に反応。昨年のサッカーW杯で話題となった「三笘の1ミリ」になぞらえて、「源田の1ミリ」がトレンド入り。9回表には「背面キャッチ」も成功。右手小指を骨折しながら強行出場を続ける守備職人のプレーは、まさに「たまらん」ものだった。

■ムネは必ず打ってくれると信じていた

 今大会は日本で行われた第1次ラウンドから準々決勝のイタリア戦まで投手、野手ともに“順調”だった侍ジャパン。その中で唯一といってもいい不振に陥った選手が昨シーズン史上最年少で三冠王となった村上宗隆だ。イタリア戦では2安打を放ったものの、米国に場所を移した準決勝のメキシコ戦ではチャンスで三振を喫するなど、7回までの4打席で3三振と“嫌な予感”が漂った。

 だが、1点ビハインドで迎えた9回無死一、二塁の場面で打席に立つと、チームを決勝に導くサヨナラの2点タイムリーを左中間に放った。これまでの不調から“生き返った”村上について大谷は「ムネはここまで苦しんでいたけど、必ず打ってくれると信じていた」とコメント。チームリーダーとして悩める若き主砲を労った。蘇った“村神さま”は決勝のアメリカ戦でも同点弾を放って勝利に貢献し、早くも2026年の次回大会への出場にも意欲を示した。

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栗山監督も“記憶に残る言葉”