それぞれの手紙の内容を全員で共有するなかで、我々は彼らの祖父母世代に共通する大きな特徴に気づきました。

 一つ目は子どもの数の多さです。

 団塊の世代(第一次ベビーブーム)の方が大半で、そのため遊び仲間には事欠かなかったようです。ある子のおばあさまの小学校では1クラス60人近くいて、1学年9クラスあったという事実に子どもたちは驚きを隠しきれませんでした。

 二つ目は戦後日本の家庭の経済状況です。

 どなたも共通しておっしゃられていたのは、戦後すぐの日本はみんなが貧乏だったということでした。よほど裕福な家庭でない限り、おもちゃや遊び道具を持っていなかったとのこと。そのため、身近にあるもので工夫して遊ぶしかない点を強調されていたのがとても印象に残りました。

 おじいさまやおばあさまが時代の語り部になってくださることで、探究堂キッズは今回のプロジェクトのテーマである「遊びの歴史や時代が与える影響」について考えをどんどん深めていきます。

 当時の深刻な経済や社会情勢が伝わってくる祖父母の手紙に比べると、ご両親の手紙にはどこかしら明るくのんびりとした雰囲気が漂っていました。

 家の前の川でザリガニやおたまじゃくしを捕まえたり、遊具の豊富な公園でターザンロープに興じたり、漫画の描き合いっこをしたり。

「『ケイドロ』は学校でよくしてるで! お父さんは足が速かったから、泥棒の時に全然捕まらへんかってんて」

 自分のお父さんの武勇伝を語る姿はどことなく誇らしげです。

 テレビの影響でスケートボードやヨーヨーを始めたというエピソードは世代の近い私にもドンピシャで当てはまり、共感しきりでした。

 幼い頃に木造の大きな平屋に住んでいて、はしごで瓦屋根に登って柿を取ったり、そこで昼寝したりなんていう今では貴重な経験をされている方もいらっしゃいました。

「俺もやってみたいなあ」と息子さんも羨ましそうです。

 ひとつ不思議に思ったことはどなたもコンピューターゲームについて触れていらっしゃらないことでした。私が小学生の頃は、家庭用コンピューターゲーム機が一般家庭に普及し始め、外遊びと同じくらい友人たちとゲームに夢中になっていた記憶があります。

「なんでやろ? ゲーム機を買ってもらわれへんかったんかなあ。ちょっとお父さんに聞いてみよ」

 気になったことはインタビューで確認し、情報を収集します。

 子どもの遊びと世の中の動きのつながりを探究する営みはまだまだ続きます。(文/山田洋文)

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