職場で大人の発達障害の模索が続いている。職場に隠したまま働く「クローズ就労」に悩む当事者、そして彼らと働く人々の苦労もある。そんな中、発達障害の人を積極的に採用する職場が存在する。「共生」に必要なヒントがあった。
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教育の現場と比べ、お互い成人していることが多い就労の現場では、困難さはさらに際立っているように見える。「発達障害」という言葉に耳なじみはあっても、発達障害の特性や対応のしかたについて具体的な知識がないことも遠因だろう。
研修事業の支援を行うカレイドソリューションズが5月に実施した意識調査によると、「従業員が、発達障害への知識や、発達障害の方への対応を学べれば、ビジネスの成果につながると考えるか」との質問に、人事・人材育成担当者の65.5%が「つながる」と回答。一方、「従業員に対して、発達障害の知識や、発達障害の方への対応を学ぶ研修を行っているか」との質問には8割超が未実施と答えた。
このジレンマをどうすれば克服できるのか。
人材開発・組織開発会社「NANAIRO」では、法人向けに障がい者雇用促進の支援を行っている。同社社長の白砂祐幸さん(43)は言う。
「発達障害の可能性のある社員を前にしたとき、企業側の最初の反応は『戸惑い』です」
仕事中、メモが取れない社員がいたとする。周囲はまず戸惑う。そして、採用試験を通ったのだから「できないはずはない」と考え、やりたくない理由があるのか、サボっているのか、と不信やいら立ちを募らせる。
ネットには発達障害について有象無象の情報が飛び交っている。そのうち、「この人、発達障害かも?」と周囲でささやかれることもある。
「問題はこの先です」と、白砂社長は言う。
「原因が『障害』かもしれないと認識した瞬間、周囲は『怖い』という感情が先に立つ。本人を傷つけたくないという思いも働くのでしょうが、発達障害がどういうものなのか、どういったコミュニケーションをとればよいのかがわからず、対応した経験もないため、改善に向けた対話が進まないのです」