【放送大学在学、アルバイト】小澤茜さん/放送大学がなかったら、バイト先の紳士服店で正社員になることを目指していたと思います」と語る(撮影/編集部・澤田晃宏)
【放送大学在学、アルバイト】小澤茜さん/放送大学がなかったら、バイト先の紳士服店で正社員になることを目指していたと思います」と語る(撮影/編集部・澤田晃宏)
この記事の写真をすべて見る
放送大学の沿革(AERA 2019年6月24日号より)
放送大学の沿革(AERA 2019年6月24日号より)

 さまざまな理由で大学進学を阻まれる若者たちがいる。懸命に学び続けようとする彼らの「学びのセーフティーネット」になっているのが、放送大学だ。なぜ、放送大学を選んだのか。

【年表で見る】放送大学の沿革はこちら

*  *  *

 母子家庭に育った。家計に余裕がないことは知っていた。それでも、高校時代は塾にも通わせてくれた。大学に進学できると思っていた。神奈川県大和市の小澤茜さん(19)は振り返る。

 現役合格を目指して勉強し、東京理科大学理学部と立教大学理学部に合格した。母親は小澤さんに言った。

お金は出せない」

 祖母の助けがあった。一人っ子の小澤さんのために40万円を貯金していてくれた。夜間部の学費は昼間部より60万円ほど安いこともわかった。小澤さんは自宅外通学では最高額の月6万4千円の奨学金を借り、東京理科大学理学部第二部への進学を決めた。

 8時に起き、9時半~14時に紳士服店でアルバイト。16~21時に大学で授業を受け、23時に帰宅する。そんな生活は、半年も続かなかった。

「母親との関係が冷え、下宿先から大学に通いました。教科書代や交通費の負担も大きく、後期の授業料約40万円を準備できませんでした。バイトをしながらでは予習や復習の時間も取れず、中退を決めました」

 それでも、勉強を続けたい。小澤さんの思いを繋ぎ留めたのが、放送大学だった。入学料は2万4千円。大学卒業までに必要な授業料は70万6千円で国立大の平均の3分の1以下。それも、入学時に全額支払う必要はなく、履修する単位分(1単位5500円)を学期ごとに支払う。最大10年間の在籍も認められ、働きながら勉強を続けられる。2018年10月、小澤さんは放送大学に入学した。

次のページ