女性は信じられなかった。
「今どき個別の事情を考慮しないなんて、どれだけブラックなんだ」
いまや、共働き世帯は専業主婦世帯の倍以上となっているのに、PTAでは専業主婦が中心メンバーとなり、平日の日中、長時間にわたり活動しているところも少なくない。改革しようとしても、その長時間の活動こそが親睦のために大事だなどの理屈もあって、システムは変わらないケースが多い。
共働きの親たちが、何十年も前に作られたシステムを同じように担えと言われても、無理な話だ。2人に1人の子どもが貧困とされるひとり親世帯では、活動に参加する余裕すらない。
●全国協議会が発行する「PTA応援マニュアル」
多くの親たちは、子どもが人質に取られていると感じている。だからしょうがないと意に反してのみ込んで引き受けるのだ。
だが、この認識自体が誤りだ。
PTAとは、Parent‐Teacher Associationの頭文字をとったもの。ご承知のように、保護者と教職員で構成されるボランティア組織であり、やりたい人だけがやればいい任意加入の団体だ。
PTAの強制加入を巡っては、裁判まで起きている。2014年6月、熊本市の保護者が小学校のPTAに加入していないのに会費を徴収されたとして、会費の返還などを求める訴訟を起こした。17年2月、福岡高裁で和解し、和解条項には、PTAが入退会自由な任意団体であることを、保護者に十分に周知することや、退会を不当に妨げたりしないよう、PTA側が努めることが盛り込まれた。
恐怖の保護者会を経てまで役員を決めておきながら、実際、PTAは何をしているのだろう。
PTAは1946年、GHQにより、民主主義教育推進のために積極的役割を果たすことを期待されて勧奨されたことが、その始まりと言われる。文部省(当時)は翌年、PTAの手引書を作成、全国の都道府県知事に送付した。48年には全国の小中学校の約7割の学校にPTAが結成されたという。
この成り立ちからもわかるように、PTAはそもそも、GHQと文部省の指導の下、その意向のままに作り上げられた「官製団体」だといえる。
その組織は、市区町村‐都道府県‐ブロック‐国へと連なる縦の系列があり、そのトップに立つ全国組織「日本PTA全国協議会」が発行する「PTA応援マニュアル」では、PTAの活動をこのように紹介している。
真っ先に出てくるのが、「学校行事の運営を手伝う」。PTAに最も期待されているのは、「学校のお手伝いさん」という役割なのだ。