「PTAなんていらないでしょう。そもそも、子どものための活動をやっていないんですよ。ただ義務的に、前例踏襲の活動をしているだけの組織はないほうがましです」
●ヒエラルキーの最下層は、出身者以外の低学年の親
非効率的な活動の仕方、毎年儀礼的に続く活動内容など、PTAの問題点はこれまでも言われてきた。それを改めるため、火中の栗を拾うように会長や役員となり、改革に乗り出す人がいる。だが、その人自身が疲弊してしまい、「もうPTAなんていらない」と考えるほどになるのだ。
東京郊外に住む女性(44)も役員を務めている際に、こんな経験をした。
「PTAって簡単に、仲間外れを作ることができる組織だと思います。特定の方に情報を伝えなければいいのですから。そして、陰で誹謗中傷の花が咲くんです」
かつて本部役員をやっていたメンバーは、うつになったという。お局のような副会長にいじめられたことが原因のようだ。
「子どものためにPTAをやっているのに、病気になるなんて本末転倒ですよね」
東京23区に住む女性(42)は、「PTAヒエラルキー」を感じている。
「ヒエラルキーの頂点が会長、副会長など本部役員です。最下層が、その学校出身ではない、子どもが低学年の方。学校や先生に詳しくないだけで、PTAでは見下されるんです」
なぜこうも私たちは、PTAのために屈辱や悔しさを味わわねばならないのか。冒頭の男性だけではなく、PTA役員などを経験した多くの人から同様の話を聞いた。
PTA活動では、地域の昔ながらの有力者が幅をきかせていることがあり、権力を得たい人や優越感を手にしたい人が牛耳っているケースもある。また、外側からのチェックが及ばず密室化していることも問題を深刻化する。
PTAに参加する親たちを悩ませる筆頭に挙げられるのが、新年度最初の保護者会で行われる、役員決めだ。
前出の東京23区に住む女性は昨年、フルタイムの仕事の有休を取って、小学校で初めての保護者会に参加した。
会が始まると、担任は教室に3人の本部役員が来るや教壇を明け渡した。1人が教壇に立ち、残り2人が前と後ろの扉の前に立つ。完全に出入りの自由を奪われて、こう告げられた。
「これから、このクラスのPTA役員決めを行います。決まるまで、全員、帰れません。いいですね」
女性は予想もしない展開に心底、驚いたが、役員は平然と付け加えた。
「6年間で最低1回、できれば2回、役員をやってもらいます。みなさん、平等にやってもらうのが原則です。フルで働いている、小さな子どもがいる、ひとり親、介護中など、個々の事情は、一切、考慮しませんから」