話題性のあるものがSNSで拡散され、より注目されるサイクルもある。

 さて、日本の激辛史をひもとくと、いくつかの大きな山が見えてくる。いわゆる「激辛ブーム」だ。第1次激辛ブームは、バブル景気が目前に迫った1980年代中盤。有木研究員は言う。

「経済成長が続き、食が多様化した時期。特別感や新鮮味が求められるなかで、刺激のある辛さが世間に受け入れられました」

 ブームの先駆けが84年発売のカラムーチョ(湖池屋)だ。今も親しまれる商品の元祖で、メキシコ料理がヒントになった。

「アメリカで流行していたチリ味に着目しました。前例がなく社内でも賛否両論がありましたが、革新的な商品にしたいと開発しました」(湖池屋広報部)

 辛さと旨さを併せ持った新しい味は、狙い通り大ヒットした。

 85年にはベルフーズ(現クラシエフーズ)が激辛カップ麺「カラメンテ」を発売。1年で35億円を売り上げた。

 外食店でも、「超辛」「辛さ○倍」などを売りにした店が相次いで登場。86年の新語・流行語大賞では、新語部門・銀賞に「激辛」が選ばれている。

 しかし、ブームは86年をピークに一気に下火に。スナック菓子だけで30種ともいわれる激辛系が乱立したが、一部を除きいつしか姿を消した。

 次の激辛ブームは90年代。辛みのある東南アジア系エスニック料理が急速に広まった。象徴のひとつが、バンコクに本店を構えるタイ料理・タイスキの老舗「コカレストラン」の日本出店(92年)だという。運営を担うミールワークスの小島由夫社長(67)はこう話す。

「バブル崩壊後の“ちゃんとしなくちゃ”という意識の中で、健康志向が高まりました。酸っぱくて辛いタイ料理は、油が多い中華に代わって広まるだろうと感じていました」

 六本木にオープンした日本1号店(現在は移転)は瞬く間に話題を呼び、連日、入店待ちの長蛇の列ができた。以降、東南アジア系の料理店が全国に誕生した。今や、グルメサイト「食べログ」に登録されたタイ料理店は2千軒を超え、ベトナム料理店も700軒を数える。

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