いま、山椒・花椒をふんだんに使った「シビレ系」の料理が注目を集めている。1984年から始まったという日本の“激辛史”を振り返った。
* * *
濃厚で刺激的な黒いソースが豆腐とからみ、油とスパイスの香りが食欲を誘う。口に運ぶと、花椒のシビレが口中に広がった。
SNSでは最近、花椒入りの料理を食べ歩く「マー活」なる言葉が話題だ。四川料理ではシビレは「麻(マー)」と呼ばれ、基本の味覚。それが日本の食にも根付きつつあるという。
グルメ情報サイト「ホットペッパーグルメ」の調査・研究機関ホットペッパーグルメ外食総研が昨年行った調査では、カレーやキムチ鍋などの定番を抑え、麻婆豆腐が「好きな辛い料理」の1位になった。また、辛い料理が好きな人の半数以上が山椒・花椒を好きだと答えている。
東京・九段下で四川料理店「逸品坊」を営む徐英明(じょひであき)さん(54)も、花椒好きの増加を感じる。
「特に若い女性の来店が増えています。“花椒を多めに”とオーダーする人や、最も辛い『大辛』を選ぶ人も多いです」
同外食総研の有木真理上席研究員によると、日本はいま「第4次激辛ブーム」の只中にあるという。
「今の激辛トレンドはふたつです。一つは辛みの種類の多様化。二つ目がストロング系です」
これまで辛さの定番は唐辛子だった。しかし最近、同じ「激辛」でも、「シビレ系」に象徴されるように辛みの種類がバラエティー豊かになっているのだ。
一方、従来の唐辛子系では、普通なら一口でギブアップする「突き抜けた辛さ」が増えている。「ストロング系」と評される超激辛料理だ。背景には、外食に話題性やエンタメ性が求められるようになったことがある。
「お総菜が格段においしくなりました。中食が進化し、外食にはつい話したくなる話題性が求められるように。こんなに辛くするんだという驚きや、こんな料理があるんだという発見がウケています」(有木研究員)