「不合格でもまずは親が受け入れて、子どもの気持ちに寄り添ってください。ただし、なるべく早く親から先に前を向きましょう。必ず子どももついてきます。そして子どもが身につけたものを次のステージで生かせるよう、新たな目標設定をしてあげてください。まだ人生の7分の1です。この先のほうが大事だと思えるように促すまでが親の役目だと思います」
都内在住の女性(51)は、娘が公立一貫校に興味を持ったことから塾に5年生から通わせた。楽しく通い作文も上達したが、志望校は不合格。悔しがる様子は見せなかったが、親自身も、あえてさらっと流した。
「妙な劣等感を抱かせたくなかった」
代わりに何度もこう言った。
「あなたは、きっと中学か高校で伸びるタイプなんだよ」
そして本当に中学で伸びた。
「上位層がすっぽり受験で抜けたこともあり、中学1年の1学期の国語の試験が学年トップでした。このときは『無駄じゃなかったね』と過剰なくらいにほめました」
おっとりタイプだった娘は自信のせいかリーダーシップをとるようになり精神的にも成長。高校は第1志望に合格した。
冒頭の親子にも続きがある。中学入学前に自ら塾に入り「東大を目指す」と宣言した息子は、見事合格した。発表の日、受験を振り返った息子から、
「ここまで頑張るきっかけをくれたのは母さんだ」
と言われ、女性はさすがに涙があふれたという。
中学受験に詳しい文教大学生涯学習センター講師の早川明夫さんも、中学受験で失敗した後ぐっと成績が伸びた子どもたちをたくさん見てきた。
「ピンチを乗り越えた子どものほうが強い。親は、失敗したけれどそれが後で生きたという経験が自身にあるなら、それを具体的に子どもに伝えてあげると、説得力も増すでしょう」
中学受験の不合格に直面すると、親は焦るかもしれない。だが、大事なのは早い段階からの「親自身の心がまえ」だと、前出の福田さんは言う。
「まず親が、なぜ中学受験をするのかについての軸を持っておくことです。受験理由は教育環境、将来の進路など何でもいいのですが『最後まで走り切る』ための方針が大事。途中で軸が揺らぎ受験自体をやめることになっては、あきらめるという挫折体験にもなりかねません」