2月初旬にピークを迎える中学受験。望む結果にならないこともある。まだ12歳の子どもに親はどんな言葉をかけ、どう対応すればいいのだろうか。
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首都圏に住む女性(52)が「今でも涙が出るほど忘れられない一日」だと話すのは、ある年の2月2日、息子の中学受験「本命校」合格発表の日だ。
受かる気満々で「先に見てくる」と校門から駆けていった小学6年生の息子が戻ってきた。
「ありえないから一緒に来て」
2人で掲示板の前に立った。女性が「ないね」と言った瞬間、息子は「うわーっ」と声を上げ、泣き崩れた。女性は涙をこらえ息子を抱き起こして校門まで行き、校舎に向き直った。
「ちゃんと挨拶しよう。ありがとうございましたって言おう」
小学3年生から始めた長い受験生活だった。息子なりに頑張っていた姿を見ていただけに余計つらい。でも帰り道、歩きながら息子に言い聞かせた。
「この学校を受験できるまで成長しただけで、すごく立派だよ」
それでも息子は帰宅後、布団の中で泣き続ける。しばらく放っておき、翌朝、息子に言った。
「まだ受験は終わっていない。最後まで一緒にやり抜こうよ」
息子は小さく「うん」と答えたという。そして第2志望校に無事合格し、進学した。
首都圏模試センターによると、首都圏の昨年の中学受験生は推定5万8千人。近年は難関校をはじめ大学付属校や公立一貫校に人気が集まり「質的な激戦化」も進んでいる。実質倍率2、3倍の人気校だと2人に1人、3人に2人が不合格だ。
まだ12歳前後の子どもが、中学受験でつらい結果に直面したら、親はなんと声をかけるべきだろうか。前出の女性は、のちのち息子から「あのとき一緒に泣いてくれなかった」とも言われたが、後悔していないという。
「親向けの本を読み、10校以上を見学し、先輩ママから助言ももらいました。その結果『中学受験に失敗はない』という確信からの声がけでした」
大手進学塾「早稲田アカデミー」のベテラン講師、福田貴一さんは、子どもたちには最後まで気持ちが途切れないよう「絶対に第1志望に合格しろ」と言う一方、親には「万が一のための」アドバイスもしている。