土居教授は、岸田内閣がトップダウンで予算や財源を決めるのではなく、国民にメニューを正直に見せることで、給付金額と負担のバランスの議論が深まることを期待する。

■数兆円規模の予算は一つだけ

 では、実際にはどの程度の規模の予算が必要となるのか。それは今月発足したこども家庭庁の予算を見ると、はっきりとつかめるという。

「23年度のこども家庭庁の予算は全体で約4.8兆円です。そのうち児童手当は約1.2兆円。保育の受け皿整備が約1.6兆円。つまり、この二つだけで約6割を占めている。他は放課後児童クラブの受け皿整備、児童虐待防止対策、障害児支援体制の強化などで、どれも1千億円台から数千億円の予算です。つまり、予算を単純に倍にして数兆円の規模になるのは児童手当と保育の受け皿整備だけです」

 厚生労働省によると、認可保育園などに入れない待機児童は17年4月に2万6081人だったが、22年4月には調査開始以来、最少の2944人となった。

「最近、待機児童の解消が進み、保育所の定員割れが起こっている地域もあります。なので、保育の受け皿整備の予算1.6兆円を倍増することを望む人はそれほどいないでしょう。つまり、少子化対策で数兆円規模のお金がかかるのは児童手当の拡充しかない、ということになります」

 ちなみに、よく議論の的となる児童手当の所得制限の撤廃については、「所得制限がかかっている人数はそれほど多くないので、現在の給付条件のまま所得制限を撤廃しても1500億円くらいの増額ですみます。なので、少ない予算で政策や政党の評判が上げられる。そういう意味ではコスパがいい」。

 現在、児童手当は中学生以下の子どもがいる世帯に支給されるが、これを18歳まで引き上げても4千億円程度の増額ですむという。

■拠出金と連帯基金

 1兆円に満たない予算の上乗せであれば、増税をともなわない方法で財源をねん出できる方法が二つあると、土居教授は説明する。

岸田首相が、いの一番にこれをやりたいな、と言い出すと思われるのが、すでにある『子ども・子育て拠出金』の拠出率を増やすことです。なぜかというと、給与明細を見ても一銭も負担増がないから、見栄えがいい」

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