橋本さんたちが16年に首都圏で行った調査では、このアンダークラス層の男性の49%、2人に1人が過去1年間に酒をほとんど飲まなかったという結果が出た。女性は45.2%。もちろん体質的な理由で飲まない人もいるだろうが、会社経営者らの「資本家階級」は17.3%、管理職や専門職の「新中間階級」と現場で働く「労働者階級」は3割前後で、アンダークラス層が酒代を節約している状況が浮かび上がる。
一方、正社員側も職場の飲み会に難しさを感じている。
都内の通信会社で働く管理職の女性(45)の職場でも、少しずつ非正規社員の割合が増えているという。
現在の部署は13人だが、うち正社員は5人。歓送迎会の際には非正規雇用の社員から会費を2、3千円徴収することもあるが、忘年会は正社員だけ100万円近くボーナスをもらっている負い目もあって、請求しづらい。昨年は1人5千円の飲み放題なのに、部長と課長職の自分は2万円を支払った。昔は2、3カ月に一度は部署のみんなで飲みに行っていたが、今は忘年会と歓送迎会しか開けなくなった。
大手メーカーの開発職の男性(39)は課長になってから同僚たちと飲みに行った会計の場では、いつも1万円や7千円をさっと出す。先輩にしてもらった分を返す番だと思うからだ。だが、年上の派遣エンジニアもいる席では、自分がそうすることで、嫌な思いをさせないかと悩む。長年同じ職場で働いているのに、キャリアアップは望めず同じポジションで働き続ける彼らの気持ちを考えてしまう。
前出の橋本さんは言う。
「飲み会は人間関係を築く場にもなります。もしその職場にとって飲み会が必要なものであるというなら、会社が一部でも負担すればいい。会費制にする場合は給料に比例して傾斜配分で。飲み会がその後の仕事をやりやすくし会社の生産性を上げるものであるなら、飲み会の恩恵は、給料の高い人ほど大きく受けるからです」
橋本さんは、職場で忘年会などの費用を毎月積み立てる際も、給料に比例して負担額を傾斜する仕組みをつくったほうがいいと言う。
職場の飲み会が必要だと考えるなら、会社の補助や事前の準備を。そこまでして……と思うなら、飲み会はやらずほかの方法を考えた方がいいかもしれない。職場の飲み会をどうしていくか、一度会社全体で考えてみては?(編集部・深澤友紀)
※AERA 2018年12月3日号より抜粋