「しっかり仕事内容を聞いてから選考に臨むか決められたので不安も少なく、入社の決断もしやすかったですね」(藤田さん)
中途採用の面接に来た人が社内バーにできた人の輪を見て社の雰囲気を知ったり、社長と面接受験者が社内バーで缶ビールを傾けたりすることもある。ときには役員と受験者で飲みに出かけることもあるという。
「面接だとどうしても構えてしまって、その人の素がわからないこともある。一緒に飲みに行ってざっくばらんにお話しすることで、互いをより理解できると思います」(玉木CFO)
酒席での会話で不採用としたことはないというが、受験者にも自分たちを知ってもらうのに、酒席は最適だそうだ。
「いずれも会社でお金を出していますが、いい人材に巡り合える確率は高いし、普通に採用するよりコストパフォーマンスもいいですね」
●堀場製作所
「乾杯!」
11月12日の夕方6時、京都市南区にある計測機器大手、堀場製作所本社の講堂で、足立正之社長が声をあげた。11月生まれの社員、総勢128人の誕生会だ。足立社長、堀場厚会長ら10人の役員がホスト役となり、和気あいあいとしたパーティーが始まった。
誕生会に出席するのは一般従業員と役員のみ。管理職は参加せず、新入社員も会長も分け隔てなく自由に話ができる。管理本部の河原林茉衣さんは言う。
「社員の参加は強制ではありませんが、皆楽しみにしており出席率は非常に高いです。過去には誕生会の席で、役員に『海外研修に行きたい』とアピールして認められた人もいます」
同社で毎月の誕生会が開催されるようになったのは1999年のこと。当時社長だった堀場厚会長が発案者だ。
「社員がメールで役員に意見を直訴できる制度を設けたのに、2カ月で4通しか集まらなかったそうで、『直接顔を合わせて、酒を飲みながら意見を言える場を作ろう』と始まったと聞いています」(河原林さん)
現在、京都本社では毎月、東京・名古屋・九州の各支社でも年に数度開催。堀場会長はじめ役員全員は最優先業務として各社をまわり、年間約20回の誕生パーティーのホストを務める。