企業にとってビジコンの最大の魅力は「主体性」「課題解決力」のある学生が集まる点だ。
「数年前まではそうした学生に出会える場はインターンシップでした。しかし、最近は『とりあえず来てみた』『早く内定が欲しい』という学生が増え、マッチングの精度が落ちています」(マクロミルの新卒採用グループ長、神谷友佳理さん)
ビジコンの場合、参加企業からの内定を意識する学生は少数派で大半は腕試しが目的だ。グリコの課題で見事1位になった冒頭の東海大生で、大学院に進学予定の川崎香織さん(4年)は言う。
「自分たちの学んでいるマーケティングサイエンスがどこまでビジネスの世界で使えるのか試したかったんです」
藤田真緒さん(3年)も言う。
「企業の独自データを触らせてもらえる点に惹かれました」
早い段階からビジネスに関心を持つ学生もいる。滋賀大学データサイエンス学部チーム(グリコ部門で3位)の2年生、小西秀明さんは、1年生の終わりの春休みに銀行で2週間のインターンシップを経験したという。
ビジコンと採用をどの程度リンクさせるのか、主催者や企業によって考え方はさまざま。参加企業の一つ、江崎グリコは、11月下旬から始まる採用直結型インターンの選考に、コンテストの上位チームの3年生を招待する方針だ。このマーケティング職のインターンは、約20人の枠に1万人超が応募する狭き門だが、コンテスト経由の学生は、エントリーシートや書類審査が免除され、筆記・面接試験から参加できる。
マクロミルより一足早く、2016年から始まったビジコン「キャリアインカレ」は「学生の成長」が主眼だ。企画したマイナビワカモノ活性事業企画部の羽田啓一郎さんは言う。
「多くの学生の就職相談に乗ってきましたが、あまりにビジネス感覚がないことを痛感していました。この課題をなんとか解決したいと思ったんです」
従来の新卒一括採用は、終身雇用とセットの仕組み。一社でずっと働くことを前提に、知識やスキルのない学生を「入社してから育てる」という発想だ。そのため、学びと職業が分断され、仕事に自分の学びがどう関連するのか、わからないまま漫然と勉強し、いきなり社会人になる。羽田さんはそのギャップをビジコンで埋めたいと考えた。