上田都議(右上)と一緒に保活の戦略を練る母親たち。「自転車で20~30分の園にも申し込む」という母親も(撮影/越膳綾子)
上田都議(右上)と一緒に保活の戦略を練る母親たち。「自転車で20~30分の園にも申し込む」という母親も(撮影/越膳綾子)
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 来年度の保育園入園に向け“保活”が本格化し始めた。今年、待機児童数は減少。ただ、決してラクになるわけではなさそうだ。

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 10人ほどの女性たちが、申請書類を広げて熱心に議論している。「ここを強調すると説得力が増すのでは?」「必要度を数字で可視化させないと」……。

 ビジネス論議ではない。テーマは“保活”。元東京都江戸川区議で現在は都議の上田令子さんと区内の母親らが作る「江戸川ワークマム」の保活に関する講習会だ。

「保育園の申請書類には、“エビデンス”を付けてください。タイムカードのコピーや、家のローンの書類。毎朝マンションのエレベーターがなかなか来ないなら、通勤時間を書く欄に付記しましょう」

 上田さんのアドバイスを母親たちは熱心にメモする。参加者たちには悲愴感さえ漂う。

 医療系企業で働く女性(30)は来年4月の1歳児枠を狙う。

「うちはどの園も遠いと区役所に相談したら他区の認可外保育園を勧められ、『1歳児を連れて電車通園は無理か。アハハ』と笑われました」

 参加者からは一斉に「ひどい」「暴言だ」との声が上がる。

 アパレル企業の経理部門で働く女性(36)は、専門性が高い仕事で後任者が定着せず、復職を強く求められている。来年4月に入園できなければ育休が切れて失業してしまうと訴える。

 厚生労働省が発表した2018年4月時点の待機児童数は、4年ぶりに減少し、全国で1万9895人だった。前年比6186人の大幅減少で、10年ぶりに2万人を下回った。

 だが、この数字をもって保活の状況が大幅に改善したとは言えない。そもそもこの待機児童数には、希望しないのに認可外保育園に通っていたり、特定の園を希望している“隠れ待機児童”の数は含まれていない。

 保活の実態を正確に把握するため「保育園を考える親の会」では毎年、待機児童数とは違う「入園決定率」を発表している。全国の100自治体について、認可園等(認定こども園、小規模保育、家庭的保育などを含む)に申し込んだ児童のうち入園が決定した割合を調べたものだ。一般的には、国の保育基準を満たした認可園を望むケースが多いため、この数値が保活の実態に近いと言っていい。同会代表の普光院亜紀さんはこう分析する。

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