一方で、入園決定率が改善している自治体もある。目立って改善したのは杉並区(73.9%)。一時は、都内屈指の保活激戦区だったが、ここ7~8年で保育園の定員を約2倍にしている。同区では保育園建設に住民の反対運動が起きることもあったが、自治体が整備を急ピッチで進めた。普光院さんは言う。

「国は保育園の定員数を確保するために、必要面積や保育士の配置基準、園庭の設置などの規制を緩和してきた。これらを元に戻して、本当に子どもに適正な枠を確保しなくてはならない」

 数値には表れない、自治体の個別事情も保活には大きな影響を及ぼす。江戸川区では、「低年齢児は集団保育よりも家庭的保育を重視する」という区独自の方針から、公立認可園で0歳児を受け入れていない。私立認可園には0歳児クラスもあるが、希望者が殺到して狭き門だ。

 代替手段として、子育て経験のある人が家庭で最大3人まで0歳児を預かる「保育ママ制度」を整備しているが、保育ママは区の研修を修了すれば、保育士などの資格は問わない。区によると、保育ママ193人中、有資格者割合は25.4%。冒頭の講習会参加者の中には、保育ママとの相性や密室環境の安全性を心配する人もいた。

 都内の化粧品会社に勤務する女性(40)は、年度内に転居をするが、引っ越し先は保育園の入りやすさを考慮した。長男(3)と長女(2)の預け先の確保は、仕事をするうえで死活問題だ。

 都内6区を候補地とし、平日に休みをとって各区役所を回った。区によっては入園申請時に住民票を移していなければポイントが大幅減点になる一方、新居の契約書があれば区民と同等に扱われる区もあり、申請資格にも自治体格差があった。

 最終的に転居先に決めたのは豊島区。同区は、15年度から毎年10園ペースで新園を開設し、17年から2年連続の待機児童0を誇る。「ここなら」と家を建てた。ところが、10月になって入園案内を手にすると青ざめた。新居から通える範囲に新設園がなかったのだ。

「4歳児クラスは在園児の持ち上がりでほぼ満員。認証園や認可外園は先着順で決まるところもある。完全に出遅れました」

 同じ自治体でも、新設園ができて比較的入りやすいエリアとそうでないエリアがある。保活では自治体“内”格差も深刻だ。(ライター・越膳綾子)

AERA 2018年10月29日号より抜粋

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