20年以上にわたり学校現場を取材してきた教育ジャーナリストの佐藤明彦さん(45)は、「読書感想文は、もともと国が書くように定めたわけではなく、学校の自主的な取り組みとして始められたものです」と話す。

「宿題として課されるようになったのは、1950年代前半から。戦後、教材が自由に選べるようになり、学校図書館の整備も進められました。それに伴い多くの学校で、子どもが好きな本を読んで感想を書く取り組みが行われるようになったんです」

 実は、定期テストや家庭訪問、通知表といった取り組みも、自然発生的に生まれたという。

「学校にはこうした『昔からやっているから』という理由で、今も続けられている制度がたくさん残っています」(佐藤さん)

 もちろん、読書感想文をやる“お題目”はある。よく言われるのは、読書習慣を身につけさせること。その上で、読解力や文章力、さらには論理的思考力を養いたいという狙いもある。

 ただ、「そうした能力を子どもに身につけさせる上で、はたして読書感想文が有効なのかはわからない」と佐藤さんは語る。

「例えば、2015年に経済協力開発機構(OECD)が実施した学力調査の結果を見ても、日本の子どもは読解力が弱い。感想文のほか朝読書など、様々な形で努力はしていますが、成果が出ているのかは未知数です」

 実際、読書習慣も身についているとは言い難い。今年2月発表の、全国大学生活協同組合連合会が全国の国公立・私立の学生約1万人に行った調査によれば、1日の読書時間が「ゼロ」と答えた学生は53.1%で、半数を上回った。

 読書感想文については、子どもが興味を持ちづらい本を「課題図書」に指定し読ませることで、むしろ読書嫌いを加速させているといった指摘さえある。

「課題図書を指定する学校は、全体の2割ほどで多くはありません。ただ問題は、本を読むことを宿題として強制することで、読書の面白味を子どもが感じられなくなる点にあるのでは」

(ライター・澤田憲)

AERA 2018年10月15日号より抜粋

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