会見に応じる大坂なおみ選手(撮影/遠崎智宏)
会見に応じる大坂なおみ選手(撮影/遠崎智宏)

 恵まれた体格を生かしたパワーとスピードにメンタルの強さを加え、一気に日本人初のグランドスラム(GS=全豪、全仏、全英、全米の4大大会)を制覇した大坂なおみ(20)。

【写真特集】就任発表会の様子をフォトギャラリーで紹介!

 全米オープン決勝では憧れ続けた女王セレナ・ウィリアムズを質の高いテニスで圧倒。焦ったセレナが激高して審判に暴言を繰り返し、再三ペナルティーを受ける荒れた試合も最後まで気品を失わず勝ち切った。

 そして、地元のセレナびいきの観客のブーイングが巻き起こる表彰式の異常な雰囲気も、機知に富んだスピーチでひっくり返した。報道ステーション(テレビ朝日系列)で「なおみキャンドル」など数々の名文句を連発したテニス解説者の松岡修造さん(50)が、新女王の魅力をたっぷりと語ってくれた。

*  *  *

 なおみさんのプレーを初めて見たとき、デビュー間もないころのセレナにそっくりだなと感じました。パワーとスピードはあるけど、全てのボールを120%の力で打つから、チャンスボールなのにフェンスを直撃するようなミスを連発していた。だから力の加減を覚えてボールが入るようになれば、間違いなくセレナのようになると思っていました。

 今年のインディアンウェルズ・マスターズ(BNPパリバ・オープン)の優勝で彼女の進化を見たときに、いつかGSは取れると100%確信しましたが、その成長の速さは予想以上でしたね。そして、今後は間違いなくGS優勝23回を誇るセレナに続いていく存在になります。

 今の女子テニス界は、GSで優勝する選手も毎回違って、ランキングも安定しません。安定した武器を持った選手が少なく、強打を連発して全部入ったときは勝てるけれど、長続きしない。以前のなおみさんも、誰にも負けないほどの圧倒的な強さで勝つときもあれば、ランキング200位の選手にも簡単に負けてしまうほどメンタルが弱いときもありました。

 そんな心の浮き沈みを見て、思い浮かんだ言葉が「なおみキャンドル」です。なおみさんは、心のキャンドルに炎が灯っているときは、心もテニスも最高最強で誰にも負けない一方、完璧主義だからこそ、一つのミスを気にし始めると、その炎を自ら消してしまうときがある。そうなると、どんどんメンタルがネガティブになり、どんな相手にも負けてしまう。しかし、今大会は違った。「我慢」「頭を使って」という言葉で自らを鼓舞し、一度自分で吹き消した「なおみキャンドル」に再び火を灯すことができたのです。なおみさんは打つことも守ることもできて、これに強いメンタルが加わって三拍子が揃いました。

次のページ
なおみキャンドルに初めて「再点火」