たなかれいこ/食のギャラリー612代表。「今ある食材を使って、その日の食欲で、どうおいしく食べられるかを考えます」。近著に『腸からあたたまるたなかれいこ的料理のきほん』(朝日新聞出版)(撮影/写真部・東川哲也)
たなかれいこ/食のギャラリー612代表。「今ある食材を使って、その日の食欲で、どうおいしく食べられるかを考えます」。近著に『腸からあたたまるたなかれいこ的料理のきほん』(朝日新聞出版)(撮影/写真部・東川哲也)
たまねぎのひたすら炒め。ごはんに絶妙にマッチ(撮影/写真部・東川哲也)
たまねぎのひたすら炒め。ごはんに絶妙にマッチ(撮影/写真部・東川哲也)

 自分の体を作っているのは紛れもなく毎日の食事だ。何をどう食べるか。それで健康も仕事の効率や集中力も変わる。異色の経歴を持つ料理家・たなかれいこさんに、料理の神髄を聞いた。

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 食材は旬のものを。素材は水にさらさない。アクもとらない。砂糖やお酒は使わない。調味料は本物を……。たなかれいこさんの料理の基本だ。

「『おいしい』を求めたら、こんな形になったんです」

 そう話す。たとえば、どんな野菜にも旬がある。

「野菜がのびのび育つときの太陽、温度、湿度、みんな野菜によって違うでしょう。旬に作られた野菜かどうか、包丁の入り方でわかります。スッと入る気持ちよさが違います」

 ごぼう、たまねぎ、にんじん……。台所には、旬に収穫された野菜たちがたっぷり貯蔵されている。たまねぎを使って、サッと一品作ってくれた。その名も「たまねぎのひたすら炒め」。

 レシピは至ってシンプルだ。たっぷりのたまねぎをたっぷりのオリーブオイルで炒め、たっぷりのしょうゆで調味した。確かに、忙しい人でも、料理が苦手な人でも、簡単に作れる。そのまま食べても、ごはんにかけても、麺とあえてもOKという。濃厚な味わいで、食べていると体がポカポカ温まってきた。

 CMスタイリスト出身という異色の経歴を持つ料理家だ。おいしいものを食べるのが好きで、スタイリスト時代もお昼ごはんがきちんと取れる仕事を選んでいた。ニューヨーク遊学中に自然食に興味を持った。見よう見まねで作った料理は、「料理を習ったことはない」が、友人知人の評判を呼んだ。帰国後、結婚。食と素材がますますおもしろくなり、30歳でケータリング業を始め、レストラン経営などを経て、現在は料理教室を主宰している。

「腸をあたためる食事を取れば、体が心地よい」と感覚的に気づいたのは、食の仕事を始めて10年ほどたった頃だ。腸内細菌や腸活がブームになる、ずっと前の話だ。

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