子どもの頃は、体が弱かった。旬のものを体調に合わせておいしく食べていたら、いつの間にか丈夫になった。
「夏野菜は体を冷やしてくれますが、今はオフィスも電車も冷房がきいていて、体が冷えがちです。だから、体の中から温めてあげないと。私は朝は食べず、お昼にサラダをいただきますが、塩気は季節で変えています。塩、しょうゆ、みそ、漬物、梅干し。その時の味覚のニーズに合わせた塩味を食べたいだけ食べると、体が温まるんです」
取材の日は、キャベツのマリネにきゅうり、トマト、ピーマン、おくら、アボカド、たまねぎをオリーブオイルとアップルビネガー、レモンで和えて、食べる際に一口ずつ、しょうゆと塩を足していただいた。
「きっと皆さんが驚くほど、塩気をたっぷり取っています。でもこれが、今日の私の体調に合った塩加減なんです」
料理を学んだ生徒たちからは、「便秘や冷えが改善した」との声が寄せられる。生理痛に悩まされた女性は、教室に通うようになってから、鎮痛剤がいらなくなったという。
「皆さん忘れがちですが、人の体は、食べたもので出来上がっています。だから、何を食べるかがとても大切なんです」
おいしく食べて、美しく健康に、が料理の神髄だ。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年8月27日号