過去の教科書を読み倒し、学校での性教育の変遷を徹底調査した。見えてきたのは、バッシングが起きるたびに萎縮し、世界と比べて大きく遅れる性教育の現場だ。
【裸だったイラストが、体操服を着用したイラストに変わった教科書も】
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体操する人の抽象画を配したデザイン。オレンジ色の表紙のフチがこすれて、白っぽくなっているところまで見覚えがある。そう、これぞ自分が中学校のときに使っていた、保健体育の教科書で間違いない。
過去のさまざまな教科書を閲覧できる教科書図書館(東京都江東区)での、四十数年ぶりの再会だった。試しに同年代のほかの教科の教科書もチェックしてみたが、見覚えのある表紙は皆無。どうやら中学生の自分は、保健体育の教科書だけ、やたら念入りに読んでいたみたい。きゃー。
それにしてもなんで今、古い保健体育の教科書なんてめくっているのか。今回編集部から与えられたミッションは、歴代の保健体育の教科書の読み倒し。教科書から見える、学校での性教育の変遷を「調べてみて」というお題を与えられたからだ。
学校時代に受けた性教育について、覚えてないか、覚えていても、物足りなさを感じている人は多い。アエラネットでのアンケートでも、自身や子どもが学校で受けた性教育について、こんな回答が寄せられた。
「小4のときに、女子男子別々に生理の話などを聞いた。セックスについてや、若年でも子どもができることなどは一切触れず」(47歳・女性)、「高校でやったが、内容は忘れました」(50歳・女性)、「小5で雄しべと雌しべに例えて、子どもができる仕組みを教わった。性行為などは登場せず、当たり障りのない内容」(38歳・男性)などなど。
また、「1986年生まれの息子が小1のとき、保健の先生が人形を使って、出産について解説。寝た子を起こすな的なクレームがあったと聞いた」(60歳・女性)、「80年代後半の高校時代、セックスの過程を説明する米国の性教育ビデオを見せられた。生々しくて気分が悪くなる女子が続出」(47歳・女性)など、チャレンジングな性教育の試みが引き起こした騒動を語る人も少なくなかった。
「今なら絶対、問題になっていると思うけど」
そう前置きして、小学校の保健体育を振り返るのは、専門学校に通う女子大生(19)だ。
「男女の身体の違いを描いたイラストを黒板に貼ったところ、教室はやんややんやの大盛り上がりに。先生が興奮している1人の男子をつかまえて、『落ち着かないと、服を脱いでモデルになってもらいますよ』と言って、一気にシーンとなった」