そうそう。「今なら問題になる」で思い出した。自分(50代・女性)にも、中学での男女別の性教育の授業のあと、生理のことをオザワくんという男子にからかわれた思い出が。「そんなに興味があるなら」とオザワくんのカバンに、女子みんなで、配られた生理用ナプキンをごっそりイン。オザワくんはカバンを開けたとたん、驚いて泣き出してしまった。ごめんね。
そんなことより、ミッションだ。まずは自分が使っていた70年代の中学の保健体育の教科書から年代順に見ていくと、性教育に関わる部分が大きく変わっていることがわかる。だいたいページ数からして違う。70年代は思春期の身体の変化などを、文字だけであっさり2~3ページで紹介するだけの教科書が多い。それが80年代になると図版も増えて、ページ数も倍増していく。
2000年代に入る頃にはカラー化、大判化の波が、保健体育の教科書にも押し寄せるように。巻頭グラビアで生命誕生の様子がカラーで紹介されたり、生殖器の様子をカラーイラストで詳細に解説したり。何だかんだで10ページ近くを割く教科書もあった。
そして現在。例えば、多くの学校で採択されている保健体育の教科書「新・中学保健体育」(学研)は、こんな感じ。「心身の発達と心の健康」という第1章では、内臓の発達などとともに、生殖機能の発達を紹介。女子の排卵や月経、受精、着床などの仕組み、男子の射精の仕組みなどが、カラーイラスト入りで解説されている。
またこうした理系の情報のほか、性との向き合い方を説いたページも用意。「インターネットなどで調べ物をしているときにも、性に関する言葉ばかり探してしまう」などの悩みがイラスト付きで紹介されたり、欄外の豆知識的な情報として、「デートDV」なんていう言葉も見える。
とまあ、こうして中学の保健体育の教科書を例に早足で見ていくと、学校の性教育は大きく進歩したかのように見える。
でもちょっと待って。よく見ると、顕微鏡レベルの受精の仕組みは紹介されていても、そこに至るまでのセックスについての話が、ほとんど見当たらないんですけど。学校の性教育は、前進してきたわけではないんですか?
「たしかに中学の教科書でも、性教育に当たるページ数は増えているのですが……」
解説してくれたのは、女子栄養大学非常勤講師で、保健学博士の茂木輝順さんだ。戦前から現在までの日本の性教育を研究し、特に戦後の性教育については、保健体育など歴代の学校の教科書をヒントに、その歴史を追っている。