校外活動など、体験型の学習プログラムはむしろ増えているが、成果には疑問符がつくという。「おじいちゃん、おばあちゃんなど、世代の違う人との接点も少ないから戦争や貧困を耳にしたこともない。空腹を我慢した経験がないんです。給食がまずくて残しても『帰ってから何か食べるからいいや』って平気で言う。塾で帰りが遅くなっても、コンビニがある。どんなものにも代替えがある生活なんですね」
こうした現象は、単なる若い世代だけの特徴ではなく、深刻な問題の発露だとする指摘がある。『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)の著者で数学者の新井紀子さんは、近著『AIvs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の中で「日本の中高校生の多くは、教科書の文章を正確に理解できていない」という驚愕の事実を解説している。知識の量ばかり詰め込む教育の末に「問いかけの真意を理解できていない」学生は、何万語ものデータベースを与えられても微妙なニュアンスの違いに適応できないAIと同じ。将来、仕事をAIに取って代わられてしまう人材が量産されるだけだ、と警鐘を鳴らす。
他者とのコミュニケーションの減少や生活感の希薄さが、「理解力」「読解力」の低下を招いているのだとしたら……。
その能力を欠いたままで、AIと共存せねばならない未来をどう生きるのか。(ライター・浅野裕見子)
※AERA 2018年4月16日号より抜粋