では、年齢とトレーニングの強度は、どう考えていけばいいのか。人間誰しも、老いは避けられない。いくら筋トレが好きでも重いバーベルをずっと上げ続けるのは体にとってもマイナスに思えてしまうが、岡田さんは、一部それを否定する。
「筋力は何歳からでもつくというデータがあります。何歳だから負荷を下げなくてはならない、と考える必要はありません。理由がないのに負荷を下げたら、年を重ねるとともに弱くなるということを、自ら先取りすることになるのです」
最も大事なのは年齢ではなく、「自分の体を知る」こと。そのために必要なのは「体が発する声を聞く」ことだという。
若いころは勢いに任せてトレーニングができるが、年を重ねると、冷静さが重要になる。
「トレーニングを続けていくなかで、きょうは肩がなんだか変だなあ、というような、微妙な感覚を無視せずにしっかり受け止める意識を持つこと。それは、体が発している危険信号なのです。ウエートが重すぎるのか、あるいはフォームが悪いのか。その信号の原因を考える賢さを身に着けて、その都度、正しいトレーニング方法を選択できるようになれれば、筋肉を強くしたり、元気な体を維持していくことができたりします」
今までより関節や腱に痛みが出やすくなる。疲れが取れなくなってきた。などと感じたらトレーニングを休んでみたり、負荷を下げてみる。全身を鍛える種目の数をこなすことがきつく感じてきたら、高齢になったときに備えて足腰と体幹に集中するように切り替えてみる。そして、もし調子がいいと思う時期が来たら、また全身を鍛えるのも良い選択だ。年齢による体の状態は、人により千差万別。トレーナーをつけ、客観的に判断してもらうのも有効な手だ。
岡田さんも、自らの体との対話は一生続くと言い切る。
「10年後の自分の体がどのような状態かは、まったく想像がつきません」
昨年、東北大学大学院などの研究グループが、筋トレと病気や死亡との関係を調べた研究結果を公表した。
筋トレを週30~60分実施すると総死亡と心血管疾患・がんの発症リスクが最も低く、実施時間が週130~140分を超えると、総死亡と心血管疾患・がん発症のリスクが高くなった。筋トレのやりすぎは健康を害し、寿命に影響するリスクを示唆する内容だ。