からだの機能が落ちてきた高齢者がおちいりやすいのは、動くのがおっくうになるあまり、自分で冷蔵庫や台所にも行かず、椅子に腰かけたままでも手の届く場所にペットボトルやテレビのリモコンなどの置く場所をつくってしまうようになることだそう。

「これは生活の中で活動する空間が狭まりつつある、危険な兆候です」

 訪問介護をおこなうヘルパーに日常生活のサポートを頼んでいる患者の場合、ダイニングテーブルに移動する力があるにもかかわらず、料理やお弁当などをベッドの近くに置いてもらい、そこで食べている高齢者もいるといいます。

「こうなると一日中、トイレ以外はほとんど動かずに過ごすことになってしまい、一層手足が弱って不自由になっていきます。患者さんにはそのことをお話しし、テーブルの上を片付けたり、部屋の中を移動しやすいようにレイアウトをかえたりすることなどをアドバイスするのです」

 このように、生活環境をチェックし、リハビリにつながるような動線を提案するのも、リハビリ医の役割の一つなのです。

 からだの機能を維持するために、とくに大事なのは筋力と関節を動かすことです。

 そのための基本となるのがリハビリ用語で、「基本動作」と呼ばれるもの。

「寝ている状態から起き上がり、立ち上がって歩く一連の動作のことをいいます。さまざまな動作の基本となるもので、例えば、大腿骨骨折や脳梗塞後のリハビリでも、この動作がまずはしっかりできるように、指導していきます」

 1人でこの基本動作をすることが難しい場合は、家族や介助者に指導をし、本人には介助に協力しながらおこなう動作を身につけてもらいます。

「一方、患者さんに対する生活指導については、共通することがあります。とくに大事にしているのは『日常の生活の中で必要な活動を続けることを心がけてもらうこと』です。頑張って取り組んでもらうことで、長期間、自立した生活を送ることが可能になります」

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訪問リハビリを実施した一人暮らしの男性は