一例を挙げてみましょう。公営住宅6階の2間の部屋で一人暮らしの男性(当時77歳)は脳梗塞を発症し、後遺症として重度の左半身まひが残りました。退院後、ケアマネジャーからの依頼で要介護認定による訪問リハビリを実施することになりました。
左半身まひを悪化させないためのリハビリとともに、一人暮らしを継続していくためのからだの機能の維持と、屋外に出るなど活動範囲を広げることが目的です。この男性を担当したのが水間医師でした。
「まひのために不自由になった左側は、動かしづらいため、使わなくなると固まってくることがあります。このため、手指も含め、使える範囲で使い続けていくことが大切です。こうしたリハビリをおこなうとともに、一人暮らしの生活を維持していくためのコツとして、生活の中でできることを続けてもらうことをアドバイスしました(詳しくは後述)」
男性は日中、ベッドの端に座っていることが多いといいます。しかし、ヘルパー(訪問介護員)の手も借りながら、提案したリハビリに取り組むことを約束してくれました。
洗濯物はヘルパーに頼んでベランダに干してもらいますが、取り込みは自分でやります。毎日のルーチンとして室内を定期的に歩くことを続けました(障害物がないように部屋を整理し、壁伝いに歩いてもらうようにしました)。食事は宅配弁当が中心ですが、冷蔵庫の中のものは自分で取りに行き、食事はテーブルで取ります。
週に1回は1階にある郵便受けに郵便物に取りに行くことも続けました。ベランダに小さなプランターがあり、毎日、水をあげています。
「私が訪問をするとき玄関のチャイムを押すと1~2分で、鍵が開き、迎えてくれます。リハビリ開始から3年余りたち、80歳になった現在も男性の生活習慣は変わらず、からだの機能の低下はみられません。転ぶこともなく、一人暮らしができています」
現在は向かいのコンビニまで行くことを目標に、歩行練習に取り組んでいます。