シニアの身体づくりは、親子で考え、取り組むことをおすすめします ※写真はイメージです (c)GettyImages
シニアの身体づくりは、親子で考え、取り組むことをおすすめします ※写真はイメージです (c)GettyImages
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 日本人の寿命は延びて、人生100年時代ともいわれるようになりました。誰もが健康な身体で自立した生活を送り、長い人生を自分らしく暮らしていきたいと願っています。健康寿命を延ばし、要介護状態にならずに過ごしていくためには、どんな取り組みをするとよいのでしょうか?

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 そのカギとなるのが、立ち上がるときや転倒防止に欠かせない「筋力」です。年齢を重ねた親と子が一緒に考え、取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。連載1回目は、近年よく耳にするようになった【フレイル】について紹介します。

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 日本は、世界でもトップクラスの長寿国です。ですが「平均寿命」と「健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)」には、男性で8.73年、女性で12.06年(2019年厚生労働省データ)のひらきがあることをご存じでしょうか。つまり、長生きができても人生最後の10年前後は、思うように日常生活が送れず、支援や介護が必要になるというのです。

 日本の高齢化は急速に進んでおり、現在、総人口のうちの約3割を65歳以上の高齢者が占めています。今後も高齢者の増加が進み、とくに75歳以上の後期高齢者が急増していくため、この平均寿命と健康寿命のひらきは、大きな社会問題となっていきます。厚生労働省は2040年までに健康寿命を3年以上延ばすことを目標に掲げていて、国をあげた国民の健康づくり運動と介護予防事業が推進されているところです。

■すすんで要介護になりたい人はいない

「できるだけ介護の要らない元気な身体で、長生きしたい」

 誰もがそう願っている中で、いま注目されているのが「フレイル」です。これは、「加齢により心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が衰えた虚弱な状態」を表す言葉で、英語の「frailty(フレイルティー、虚弱・衰弱)」がその語源となっています。つまり、「健康な状態」から徐々に体が弱って、日常生活でサポートが必要な「要介護状態」になるまでの間が「フレイル」なのです。

東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生 フレイル予防ハンドブックから引用
東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生 フレイル予防ハンドブックから引用

 フレイル研究の第一人者である東京大学高齢社会総合研究機構長および同大未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢先生は、次のように話します。

「多くの人が健康な状態から、フレイルの段階を経て、要介護状態に陥ると考えられています。知っておいてほしいことは、フレイルは早く介入して対策をおこなえば、元の健常な状態に戻る可能性があるという点です。誰もが老化の坂道を下っていきますが、ゆっくり下るのか、転げ落ちていってしまうのかは自分次第。フレイルを見過ごさずに、早く気づいて正しく予防や治療をすることが大切です」

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フレイルは「三つの要素」を理解して対策を