茂木:不確実世界で、選択をする時はかなり強いロジックがないとダメで、直感がある人はいいんだけど、ない人は占いでもなんでもとにかくやって(笑)、選択をしたほうがいいと思います。選択できない人が多すぎる。

 どんなことでも行動のきっかけになることはいいことだということが、脳の働きからは言えます。賢すぎる人は、往々にして動かなくなってしまう傾向があります。

●現代こそ運命論的

鏡:社会学者のアンソニー・ギデンズが、中世の人のほうが宿命論的に生きていると思いがちだけど、そうじゃない、近代の後期、ハイモダンのほうがはるかに運命論的になっていると言うんですね。

 あるフェイトフルな瞬間に、自分がやったちょっとしたことが、未来を大きく左右してしまうと思い込まされている。未来を植民地化してしまっているというんです。

 ちょっとしたひとつずつの決断が、未来を大きく変えてしまうということをみんなが信じている。決定論的な運命論ではなく、自己責任的な運命決定論に巻き込まれているので、個人へのプレッシャーが非常に大きくなっているというのがギデンズの分析なんですね。

茂木:なるほど。占いを、例えば自分自身や他者に対する思い込みとか偏見を解き放つツールとして使うというのは、僕はある気がするんですよ。占いが固定観念から解放してくれるきっかけになることもある。

鏡:それが近代における占いの役割だと思います。つまり、占いが「非常識」になったからです。占いが「常識」だった時代は、そうではないわけです。

 このような時代のなかで占いは、普通のコンサルティングとは全く違う発想法で答えを出すので、現在の常識値のようなものからは、自由にしてくれると思います。

 ただし気をつけなくてはいけないのは、ある種の占いは、ある価値観を内包しており、とても男尊女卑的だったりする場合があるということです。

茂木:実際の人生では、すべてに正解はないのに、どこかに正解があると思っている人が多いんです。日本人は教育課程のなかで、正解がある、という前提で教育を受けてきたので、世の中には必ず正解があると思い込まされているともいえます。

次のページ