世の中に浸透する一方で、「非科学的」と眉をひそめる人も多い「占い」。しかし、個人の選択肢が増えすぎ、経験則が必ずしも通用しない現在、「信じる」「信じない」ではない「占い」とのつきあい方があるという――。AERA10月2日号では、「占い」を大特集。金融やマーケティング、カウンセリングなどの世界で「占い」がどう活かされているかを探り、現代社会における「占い」のあり方を多角的に取材した。
脳科学者・茂木健一郎さんと占星術研究家・鏡リュウジさん。正解のない現代の複雑な社会と、占いの現在を語り合った。
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茂木健一郎(以下、茂木):これは鏡さんのご専門ですが、元々科学と占いは同じ所から出てきているんですよね。
鏡リュウジ(以下、鏡):近代科学と占いは、わりと最近まで一緒でした。それは16世紀から17世紀までで、コペルニクスやガリレオ、ケプラーは、占星術師でもあるんです。占星術には、占いになっていく部分と近代科学を準備する要素が、両方入っていました。
茂木:複雑性の科学が注目を浴びたことがありました。しかし、現実の前では複雑さを扱えないということが明らかになってきた。例えば生物学でいうと、がんの征圧などもなかなかできない。がん細胞って、思ったよりやっかいなものだった。生物や社会の複雑性に対し、科学は意外と無力だということが、なんとなくわかってきました。
●AIと占いは似ている
茂木:そしてここ数年、「これで行ける」と思われているのが人工知能(AI)です。そのAIも、いろいろな研究者と話していると、そろそろ限界が見えてきたというコンセンサスがあります。囲碁や将棋はまだしも、現実社会はさらに複雑です。研究者のなかに、「AIって占いみたいなものだ」と言う人がいました。
鏡:そうですね。私は詳しくないですが、AIの何が面白いかというと、プログラミングした側が、アルゴリズムの結果にどういう答えが出てくるのかをわかっていないというところにあると思います。つまり、完全にブラックボックスなわけです。昔のオラクルの根源は、まさにブラックボックスから出てくる答えが真実性を持っているというところにありました。