9月1日は「18歳以下の自殺者数が一年で最も多い日」だ。テレビやSNSで「死んではいけない」のメッセージが飛び交う中、今年もこの日の前後に何人もの中高生が首をつったりマンションから飛び降りたりした。いずれも自殺とみられるという。
ずっと死のうと思っていた。
石川県内で暮らす20代の女性。小学校4年のときに母親が病死し、姉、妹とともに児童養護施設に預けられた。転校した学校で、壮絶ないじめが始まった。給食のうどんをすくったら黒いものがへばりついている。誰かが放り込んだゴキブリの死骸だった。
「死ね!」「消えろ!」
そんな落書きでノートは真っ黒。大量の押しピンが置かれた椅子に座ってしまったこともある。机と机をくっつけようとしたら、その席の女子にシャープペンシルで腕を刺された。
施設では、風呂に入れるのは数日に一度。男子は寄ってきては叫んだ。
「臭い!」「汚い!」
同じ施設で暮らし、やはり学校でいじめられていた1学年下の女子と、帰り道で言い合った。
「もう、いやや。このままどこか高いところから飛び降りたほうがいいね」
「うちら、なんで生まれてきたんやろ」
痛くて、つらくて、何度も家出した。担任や施設の職員に訴えても、
「あんたが悪いんちゃう?」
女性は振り返る。
「大人は自分の考えしか言わない。自分の話は聞いてくれない。全員、敵だと思った」
●中高年の自殺は減ったのに20歳未満の自殺は横ばい
卒業するとき、教室を出ようとしたら担任が抱きついてきた。
「いじめられてるの、止められなくてごめんね」
泣き叫ぶ担任の体は温かかったけれど、女性の心は冷え切っていた。
「ほったらかしにしたくせに」
大人の欺瞞(ぎまん)が許せなかった。
同級生が全員一緒に進学した中学校でも、いじめは続いた。靴や体操着がなくなるのは日常茶飯事。クラス全員に無視された。いじめを知った担任は別のクラスだった同じ施設の女の子を自分のクラスに移すという措置を講じたが、案の定、無駄だった。